脳の詳細な地図、新たに100領域が発見される! 人体最後の秘境“脳”の謎
20世紀に入ってからの飛躍的な科学技術の進歩とともに、医学の発展も目覚ましいものがあった。人体の不思議や秘密は外科的なものだけではなく、それをつくる設計図ともいえるDNAの解析によって日々そのベールがはがれていっている。そのなかでも、一番謎の多い人体最後の秘境とも言える脳の最も詳細な機能マップが発表された。
■180の部位を特定した“脳マップ”
イギリスの科学系ジャーナルの大御所「Nature」オンラインをはじめ、イギリスの「DailyMail」紙、アメリカの「Yahoo! News」といった一般メディアでも伝えられている、この医学界のニュースを見てみよう。
2013年にオバマ大統領が発表した、脳の機能解明プロジェクトを資金源とした、ワシントン大学医学部の神経科学者マシュー・グラッサー博士が率いる研究チームは、脳神経科学者とコンピュータ技術者などで構成されており、解剖学的な見地からではなく、コンピュータによる画像解析をメインとした手法によって深部構造を突き止め、今までの脳の機能マップを大幅に刷新することに成功した。
脳の機能を部位ごとに分けて、その部位同士のつながりや働きを示す「脳地図」は100年以上も前から作られてはいるが、今回の脳地図は、詳細にデータ化された210名の被検者の脳の働きを解析し、そのデータに基づいて脳を180の部位に分け、それぞれの形、機能、働き、つながりをより正確に把握できるようなものとなっている。
初期の脳地図は、ドイツのコルビニアン・ブロードマン博士が1909年に発表したものが認められ、「ブロードマンの脳地図」と知られており、現在の神経科学者もこの脳地図を使っている。このブロードマンの脳地図は、今回の脳地図と大きく異なり、基本的に解剖学的な知見をもとに脳細胞の種類によって分類されているという点で、部位それぞれの機能やつながりの解明には不十分であったと言われている。
「ブロードマンの脳地図」 画像は「Wikimedia Commons」より
■さらなる研究によりバージョン2.0を目指す
その後の脳の研究によって、部位同士のつながりや、それぞれの働きが解明され、脳地図はどんどんアップデートされており、今回の脳地図が発表される以前までには83の機能を示す地図が作られていたという。つまり今回の新しい脳地図は、既知の83の領域に新たに97もの新領域を加えたものとなるのである。
ものすごく簡単に言ってしまえば、安静時の脳と、特定のタスク(例えば、物語を聞くなど)を処理している時の脳の活動をMRI検査と大脳皮質内の神経細胞のコネクションの抵抗値の検査によって、それぞれのタスクを処理する部位を特定していくという手法によってデータを収集し、多数の被検者のデータを総合的に解析し、新たな脳の機能地図をつくりあげたということである。
たとえば今回追加された55bという領域は、解剖学的には隣接する領域と差異のない細胞種だが、この領域は脳が言語を処理する際に活発に活動していることが確認され、言語をつかさどる領域であることが判明した。それだけではなく、この55bが働く時に脳のどの他の部位と関連しているかまで解明されているということなのである。
グラッサー博士によれば、この新しい脳地図は、自閉症、統合失調症、認知症、てんかんなどと関連する、脳部位の特定や原因解明に恩恵をもたらすことができるであろうとし、脳外科手術の際にも有益なものであると発言している。また、この脳地図をバージョン1.0としており、さらなる研究によってバージョン2.0に上がっていく可能性が高いとのことである。これからの研究も要注目である。
(文=高夏五道)
参考:「Daily Mail」、「Nature」、「Yahoo! News」ほか
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