マンモスのクローン計画へ! プーチン大統領の後援でジュラシックパークの世界が実現する?

「生化学的な処置が可能な保存状態の良いサンプルを見つけ出すことができれば、我々はアジアゾウにマンモスの子を“妊娠”させることができます」とウソク博士は語る。SFの世界でよく描かれるような実験室でクローンを誕生させるということではなく、現存するゾウを“代理母”にしてマンモスを誕生させる計画のようである。

 第一段階をクリアしたというこのマンモス復元計画だが、今後の研究計画についてもすでに練られており、鋭意進行中であるという。再び地上にマンモスが闊歩する日が、意外に早くやってくるのかもしれない。

マンモスのクローン計画へ! プーチン大統領の後援でジュラシックパークの世界が実現する?の画像2Siberian Times」の記事より

■ゲノム編集によるクローニングか?

 今回のマンモスのクローン計画について、技術的な部分はまだ明らかにされていないのだが、昨今急速に進歩を遂げているゲノム編集技術「CRISPR/Cas9」の活用が指摘されている。

 九州大学の石野良純教授らによって2013年に発見された細菌の免疫防御システムが「CRISPR/Cas9」である。この免疫防御システムを簡単に言ってしまうと、細菌は過去に侵入を許したウイルスを記録しており、再び侵入してきた際には過去の記録と照合して見つけ出し、入り込んでいるウイルスのDNAを切断して排除するという働きである。

 切断された後にDNAは修復されるのだが、この切断箇所に人為的にDNAを挿入して一部DNA情報を書き換えることもできるのだ。必ず成功するとは限らず修復エラーも発生するのだが、この「CRISPR/Cas9」の発見によって、ゲノム編集技術が格段に進歩したのである。

 そして昨年、米・ハーバード大学のジョージ・チャーチ教授がこのゲノム編集技術を使って、ゾウのDNAの14カ所をマンモスの遺伝子に書き換えることに成功している。もしアジアゾウのDNA情報をマンモスのゲノム情報に完全に書き換えることができれば、理論上はマンモスが再びこの世に誕生することになる。しかしマンモスには約40億の塩基対があり、そのすべてのゲノム編集には現状では途方もない時間がかかるということだ。

マンモスのクローン計画へ! プーチン大統領の後援でジュラシックパークの世界が実現する?の画像3Siberian Times」の記事より

 はたしてウソク博士の研究チームがどのような手段を講じているのかわからないが、ひょっとするとこのゲノム編集を高速化する方法が見つかったのかもしれない。そしてウソク博士らは、マンモスのほかにも、絶滅したホラアナライオンの復元にも取り組むということだ。夢が膨らむ研究だが、一区切りついた段階で発表されるという続報に期待したい。
(文=仲田しんじ)

参考:「Daily Mail」、「Nature」、「Siberian Times」ほか

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