中国、絶対に盗聴不可能な「量子スパイ衛星」打ち上げへ! 我々の通信セキュリティ事情を一変させる脅威となる可能性

 この8月、中国科学院国家宇宙科学センターは、世界初となる量子科学実験衛星を酒泉衛星発射センターから打ち上げ、宇宙と地上間における量子通信システムを構築する方針だという。この実験が成功すれば、中国はまったく新しい次世代ネットワークの基礎技術と、決して盗聴することができない“世界一安全な”機密通信システムを手にすることになり、世界の安全保障環境が一変する可能性もあるようだ。今月3日の英紙「Daily Mail」をはじめとする複数の海外メディアが報じている。

中国、絶対に盗聴不可能な「量子スパイ衛星」打ち上げへ! 我々の通信セキュリティ事情を一変させる脅威となる可能性の画像1画像は「The Daily Mail」より引用

 光ファイバーを用いた約300キロメートルの量子暗号通信はすでに実証されており、一部では商用利用も始まっているのだが、情報の損失やノイズという問題が起きていた。そこで、人工衛星を介することでより信頼性が高く、長距離の量子通信が可能になると考えられており、世界中の研究機関が技術開発を競ってきた。その熾烈な研究レースにおいて、もしも中国が今回の実験を成功させれば、他国の一歩先を行くこととなる。


■現在の暗号技術の問題点

 ところで、現在の通信セキュリティを支えている暗号技術は「公開鍵暗号」という方式だ。ネット通販やSNSなど、私たちも日頃からこの暗号通信をよく使っている。

 この方式の特色は、暗号化に使う鍵(公開鍵)と暗号を解く鍵(秘密鍵)が別々だという点にある。例えば、ネット通販で精算をする時を考えてみよう。注文内容や支払いのためのクレジットカード情報、配送先の住所氏名などの情報は、店が配っている公開鍵を使って暗号化されて送信される。公開鍵を使って暗号化された情報は、店が持っている秘密鍵でしか復号することができない。秘密鍵は公開鍵から作られるが、その作り方は非常に複雑で、公開鍵から秘密鍵を割り出すことは現状では困難である。そのため、買い物の情報が第三者に盗み見られる心配はない。

 しかし、この技術の安全性は「解読には膨大な計算がかかる」という一点にかかっている。量子コンピュータなど、大量の計算をケタ違いに素早くこなす新技術が発展すれば、いずれ容易に解読できるようになってしまう危険性があるのだ。そこで、次世代の機密通信システムとして注目されているのが、量子を使った暗号化通信技術だ。

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