ノーブラ、ナマ足、短パン…25年間封印されたブラジャーをつけたキングコング映画が面白すぎる!
公開は法的にOKということで、奇しくもその年に公開されるティム・バートン版『猿の惑星』に「猿つながり」でぶつけられた。しかも、かつて「シッチャカメッチャカ」(若い人にはわからないだろうが)などの天才的なアドリブで一世を風靡した大声優・広川太一郎をアテレコに起用し、わざわざ「吹替版」として公開したのには驚かされた。
2001年9月22日、今年8月に渋谷のパルコPART3の建て替えに伴い、休館したシネクイントでの上映初日は、主人公のレイ(ロビン・アスクイズ)役・広川太一郎とヒロインのルース(ルーラ・レンスカ)役・小原乃梨子(のび太! ドロンジョ様!)による爆笑トークセッションで盛り上がった。そして、ついに吹替版『クイーン・コング』がベールを脱いだ。
過酷なアフリカ・ロケに耐えられる男優を探していた女性映画監督ルースは、ロンドンのアンティーク・ショップで『キング・コング』のポスターを万引きしたヒッピーの若者レイ・フェイに一目惚れする。レイはラザンガ(もちろん架空の国)に船で連れて来られるが、原住民によってクイーン・コングの生贄にされてしまう。劇場内からは、オメメがやたら綺麗な雌コング、頭でっかちのティラノサウルス、もの凄く変な翼竜などに、アチコチから失笑が漏れる(笑)。
ルースたちは、なんとかガス弾でコングを眠らせ、巨大なイカダでロンドンに運ぶ。コングとレイは戻るやいなや注目の的となり、その後、正式にお披露目ショーが開催される。だが、レイに抱き付いてキスするルースに嫉妬したコングが、興行師から無理やり付けられていた鎖のブラジャーを引きちぎってロンドン市街で大暴れ。コングをなんとかすべくイギリス空軍まで出動する事態に。ビッグベンに登ったコングを攻撃する空軍に向かって、レイは拡声器で呼びかける。
「この美しい生き物を殺すということは、女性の戦いの歴史を無にすることだ。そう、コングこそは、女をメイドや売春婦のように扱う男性社会で困難な戦いを続ける女たちのシンボルなんだ!」
この様子はテレビ中継され、共感した全英の女性たちが立ち上がり、ビッグベンに集結していく。ノーブラTシャツにピチピチ短パンでナマ足を出した女性たちが、「ブラなんか捨てて“自由の女性”の出航よ」と歌って踊り、クイーン・コングをロンドン市街に連れ帰る。コングにブラを付けさせる興行師にはルースが「女性差別!」と反発。男勝りのルース監督とクイーン・コングは、女性解放運動(エリザベス女王のソックリさんも参加)の象徴として描かれた。
確かに作品は古かった。だが単なる珍作の初公開に終わらず、声優界のカリスマ・広川太一郎が、レイの笑顔に歯が光れば「カキーン」「キラーン」。ステージに呼ばれると「ヘッチャカ、ハッチャカ、フッチャカチャ、いつまでやらせるピッチャカチャ」(笑)とリズムをとりながら登場。「ノーコメント、気持ちを込めんと」とダジャレも健在。広川節が炸裂するアテレコを乗せたことで作品に新しい命が吹き込まれ、新鮮な感覚で鑑賞することができたのだ。こういった形で封印を解いてくれたアルバトロスの企画力には感服する。
だが……ラウレンティスは1986年に妻をプロデューサーにすえ、ちゃっかりレディ・コングが出てくる『キングコング2』を作っているからズルい(笑)。前作で死んだと思われたコングが生きていて、ボルネオで発見された雌コングと駆け落ちして子供まで作ってしまう、って何?(広川調)
■天野ミチヒロ
1960年東京出身。UMA(未確認生物)研究家。キングギドラやガラモンなどをこよなく愛す昭和怪獣マニア。趣味は、怪獣フィギュアと絶滅映像作品の収集。総合格闘技道場「ファイト ネス」所属。著書に『放送禁止映像大全』(文春文庫)、『未確認生物学!』(メディアファクトリー)、『本当にいる世界の未知生物 (UMA)案内』(笠倉出版)など。新刊に、『蘇る封印映像』(宝島社)がある。
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