鳥の糞が北極の気温を下げていることが判明! 理学博士が緊急コメント寄せる「地球温暖化の阻止に…」
■理学博士が徹底解説、温暖化の防止に役立つか!?
「海鳥は毎年同じ場所に営巣するので、その糞は長年堆積して分厚い層になり、死骸や卵の殻なども含みながら、やがて化石化します。これがグアノです。鳥の糞は窒素を含むので、当然ながらグアノには豊富な窒素が含まれています。かつては重要な窒素源の一つで、肥料として高値で取引されていたそうです。化学的な窒素固定が実現し、リン鉱石が発見された現在では価値が下がりましたが、それでも肥料として大切な資源の一つなのです」
X氏によると、堆積した糞の中では微生物による発酵が起こり、窒素はアンモニアとして空中に放出されるという。北極で起きているのは、毎年大量に蓄積されていく海鳥の糞から発生するアンモニアによる寒冷化なのである。まさに「チリも積もれば山となる」だ。
さて、グアノは北極以外の地域にも存在する。有名な産地は南米やオセアニア諸国だが、実は日本にも存在し、かつて採掘されていた。では、北極以外の場所でもグアノは寒冷化効果を発揮するのだろうか? 尋ねてみたところ、X氏はおそらくそれはないと言う。
「北極の温暖化のメカニズムは不明な点が多いのですが、その中でも太陽光反射率の低下の影響が強く指摘されています。氷が溶けて黒い地面が露出しただけでもこの反射率が上がり、気温が上昇するといわれています。グアノによって生まれた大きな雲が太陽光を反射して、寒冷化に寄与するというのは、極地ならではの特殊な事象ではないでしょうか」
論文著者らは、鳥の糞による寒冷化効果は小規模であり、工業化などによる温暖化を食い止めるほど強いものではないとしている。だが、海鳥の数の増減や回遊パターンの変更により、この寒冷化効果は影響を受けやすいとも述べている。たかが糞とバカにすることなかれ。小さな生物の営みも地球の気候に影響しているのである。
(吉井いつき)
参考:「Science」、「Nature Communications」、ほか
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