SEX 研究会「相対会」会員の“発禁”性体験小説を映画化! 原作は芥川龍之介? 内容がヤバい
脚本は、秋吉久美子主演の『妹』(74年)、『バージン・ブルース』(74 年)などで有名な内田栄一。若松とは同年公開(82年)の内田裕也主演『水のないプール A POOL WITHOUT WATER』からの共同作業となった。
舞台は1923年のドイツ。第一次世界大戦の敗戦から5年、国策に疑問を持ちつつ、ドイツ史上最悪のインフレに国民が困窮する中、その間隙を突くようにナチスが台頭し始める。日本では関東大震災が起きた年だ。
名もなき主人公の男(永島敏行)は、先輩の東野 (泉谷しげる)に誘われてミュンヘンを訪れる。退廃的なムードのミュンヘンで、東野は金で女を買い漁りセックス三昧の生活を送り、男は赤い帽子を被る女(クリスチーナ・ファン・アイク)と親密になる。
やがてふたりは、貴族だった女の父親が残した郊外の古城に移り住み、愛欲に溺れる毎日を送る。だがその頃、ミュンヘンの町ではナチス党による不穏な動きが頻発。ミュンヘン一揆(ヒトラーらによるクーデター未遂事件)が発生する直前だった。放蕩な女は、たくましい体をした日本人から野望に燃えるナチス将校へと乗り換え、さっさと姿を消してしまう。
パツキン美女との夢のような性生活から一転、虚無感を引きずり東野の部屋を訪問した男が見た光景は、なんと首を吊って死んでいる先輩の姿だった。その足元には、関東大震災を報じる新聞が落ちている……。
制作はトラブル続きだったという。まず、脚本が改稿に改稿を重ね、作品は当初のもくろみとは異なるソフトコアになってしまった。つまり本番がなくなってしまったのだ。何度も脚本をいじられた内田は、初号試写を観てついに激怒。若松と神代に謝罪文を要求したともいわれている。
現場でも大変だったようで、ドイツでの撮影は難航を極めた。一例を挙げると、現地で集めた盗賊団役のエキストラは、物乞い、年金で暮らす痴呆老人、両足のない人、顔面がけいれんしている人などが集まり、「暴れるのは本番になってから」と助監督が何度説明しても、カチンコが鳴る前に小道具やガラスを破壊してしまい、これを何度も繰り返すので、スタッフたちは頭を抱えていたようだ。
作品が公開されると、その評価は低く興行も失敗する。これを境に、人気のあったエセ・ヨーロッパ文芸映画は衰退していく。作品のソフトも、公開数年後にビデオとレーザーディスクが発売されたものの、一向にDVD化されず、現在に至っている。
なお若松孝二と内田栄一は、2年後に『スクラップ・ストーリー ある愛の物語』を発表したが、以前ここでも解説したように、主演女優が14歳で喫煙・ヌード・セックスを演じているため、現在は発禁作品になっている。
■天野ミチヒロ
1960年東京出身。UMA(未確認生物)研究家。キングギドラやガラモンなどをこよなく愛す昭和怪獣マニア。趣味は、怪獣フィギュアと絶滅映像作品の収集。総合格闘技道場「ファイト ネス」所属。著書に『放送禁止映像大全』(文春文庫)、『未確認生物学!』(メディアファクトリー)、『本当にいる世界の未知生物 (UMA)案内』(笠倉出版)など。新刊に、『蘇る封印映像』(宝島社)がある。
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2024.10.02 20:00心霊SEX 研究会「相対会」会員の“発禁”性体験小説を映画化! 原作は芥川龍之介? 内容がヤバいのページです。赤い帽子の女などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで