タバコ676万本、空のペットボトル20万本を吸い取った、ゆるカワ水車のMr. Trash Wheel君の活躍!

タバコ676万本、空のペットボトル20万本を吸い取った、ゆるカワ水車のMr. Trash Wheel君の活躍!の画像1画像は「Discovery.com」より

 高度成長期には工場排水どころか、生活排水も垂れ流しだった日本の河川も様々な浄化計画によって元の姿を取り戻している例はいくつもある。筆者の実家からちょっと行った所にある川も捺染工場のせいで子どもの頃は染料の色で日によって違う色に染まっていた。

 日本から離れたアメリカ東部メリーランド州の都市にあるボルチモア港は今、深刻な水質汚染に悩まされている。ボルチモア港が接する世界で二番目に大きな「チェサピーク湾」は、湾岸の都市開発による人口増加、工業の発達による海洋汚染が進行し、今では海洋生態系も破壊されつつある。そんな中、ソーラーパネルを動力にしたなんとも可愛い水車「Mr. Trash Wheel」で2020年までに泳げる港を取り戻そうというプロジェクトが2014年に立ち上がった。


■前代未聞の画期的なお掃除水車Mr. Trash Wheel見参!

タバコ676万本、空のペットボトル20万本を吸い取った、ゆるカワ水車のMr. Trash Wheel君の活躍!の画像2画像は「Discovery.com」より

 この河川浄化計画は、ソーラーパネルのエネルギーで動く水車を使って大量のゴミを取り除くというとても画期的なものだ。「Mr. Trash Wheel」と名付けられたこのクリーニング水車は、2014年5月9日から2015年10月にかけて、タバコの吸殻676万本、空きのペットボトル20万本、発泡スチロール容器26万個、ポテトチップの袋17万等々ボルチモア港から相当なゴミを取り除いてきた。上の写真は同じ週に撮影されたものとは思えないほど水面に浮かんだ大量のごみがなくなっている。この「Mr. Trash Wheel」にはベルトコンベアが集めたゴミを巨大なゴミ箱に送る仕組みになっている。

タバコ676万本、空のペットボトル20万本を吸い取った、ゆるカワ水車のMr. Trash Wheel君の活躍!の画像3画像は「Discovery.com」より
動画は「YouTube」より

 水車を使うというのは古典的な方法かもしれないが、その成果が抜群なのは写真をみれば明らかだろう。いやいや、水車の使い方としては実に画期的なものともいえる!そもそも雨や嵐の後ゴミが溜まりやすい地形になっているボルチモア港で、ゴミを取り囲むように動く様子は上の動画を参照していただきたい。当初は湾岸の浄化作戦の1つであったのだが、その風変わりな可愛らしい形から「Mr. Trash Wheel」自体が1つの「ゆるキャラ」な存在として定着し、日々の活動報告は中の人もとい、「Trash Wheel君」自身がTwitter(@MrTrashWheel)などのSNSで発信している。


■深刻なボルチモアの汚染問題

タバコ676万本、空のペットボトル20万本を吸い取った、ゆるカワ水車のMr. Trash Wheel君の活躍!の画像4画像は「Discovery.com」より

 アメリカ先住民の言語で「カキの住む偉大な海」といった意味をもつほど豊かで美しかった「チェサピーク湾」は、近年の急速な工業都市化や複数の川の河口に位置することで海洋生態系を脅かすほどの深刻な環境問題となっている。1925年に設立されたアメリカ東海岸では最も古い海洋生物学研究所であるメリーランド大学の生物研究所では現在、約60名ほどのスタッフによって食物連鎖、物理・地理学的なプロセスからチェサピーク湾の環境汚染問題について研究を進めている。「Trash Wheel君」が水面に浮かぶゴミを取り除く一方で、水質改善のための効果的な取り込みを提案するなど様々な機関が一体となって環境問題に取り組んでいる。

タバコ676万本、空のペットボトル20万本を吸い取った、ゆるカワ水車のMr. Trash Wheel君の活躍!の画像5画像は「Discovery.com」より

 アメリカ人は生物が苦手という認識があるなか、ボルチモアでは生牡蠣をはじめ、多くのシーフードが食されてきた。脱皮したばかりの柔らかい殻をもつカニは特に特産品で、メリーランドのシーフードレシピに欠かすことのできない食材である。以前にアメリカ版の料理の鉄人(Iron Chef!)でも紹介されたほどだ。「我々には自分たちの子供のために安全に遊べる港を作る義務があるのではないでしょうか?そして、我々全員が川や湾の生物から恵みを受けてきたことを忘れてはいけないのではないでしょうか?」と、プロジェクトリーダーは語っている。

 年間数百万ガロンの下水と、上流から運ばれてくる数百トンに及ぶゴミによって汚染されてしまったボルチモアを2020年までには安全に泳ぎ、釣りのできる元の姿に戻す計画である。実際にチェサピーク湾財団とボルチモアの企業や住民たちは、牡蠣の幼生から成熟させるなど自発的な行動を起こしている。

■ゆるキャラ「Trash Wheel君」 

タバコ676万本、空のペットボトル20万本を吸い取った、ゆるカワ水車のMr. Trash Wheel君の活躍!の画像6画像は「Discovery.com」より

 ボルチモアの湾岸浄化計画に多いに貢献している「Trash Wheel君」は、TwitterやFacebookなどのSNSで自らのアカウントで日々の成果から時にはユーモア交えたツィートなど、ゆるキャラ的な存在としてTシャツやバッジが販売されるなど人気者だ。水車に目玉をつけた姿はどこか愛くるしいものがある。米国版2ちゃんねるともいわれる「Reddit」で、「Mr. Trash Wheelだけど質問ある?」と10月20日付けでスレッドがたち、その日のトップエントリーになったこともある。「いつも通りかかる時手を降っているよ、頑張ってね!」、「リオに住んでいるんだけど是非来てよ」といった風に好印象な様子だ。

 彼のツィートがなかなかユーモアに溢れて面白かったのでいくつか紹介しよう。他にもいくつもあるので是非覗いてみてくだされ。

 こういったユーモアのある取り組みは、参加する側としても実に楽しく取り込めるので効果的な方法のように思える。もちろん環境問題はボルチモアだけの話ではないが、ただやみくもに街を綺麗にと標語をたてるより効果的かもしれない。ちなみに「Mr. Trash Wheel」の様子はこちらからライブ映像がみることができる。ちなみに時差があるので筆者がこの記事を書いている時は寝ていましたが。
 
(アナザー茂)

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