汚染された土地に建設された住宅街 ― 日本だけではない、子どもに忍び寄る危機(英国)
英国ケント州、パドック・ウッドには数百軒の住宅が建ち並んでいる。その平均価格は40万ポンド(7千万円弱)であるが、その家々が建つ土地が化学物質によって汚染されている事が最近判明した。
■貯木場の跡地に建設された住宅街
タンブリッジ・ウェルズ区議会の環境調査官は、ケント州パドック・ウッドの3つの通りの住民にリスクを警告した。それは、アスベストとクレオソートを含む化学薬品が土地に浸透している可能性があり、人間の健康に有害かもしれないという内容である。
1980年代初頭まで、この地域は小屋や温室を建てるための貯木場であった。そしてこの地域の3つの通り――ザ・ライディング、ディンモック・クロース、レ・テンプル・ロード――の住宅群は、20年以上前に建てられた。専門家はそれらの住宅から土のサンプルを集め、有害かどうか調査する予定だ。住民たちには、それまで子どもたちを庭の土で遊ばせないよう伝えられた。さらに、土を触ったら手を洗うこと、ペットが土を掘り返さないようにすることなどが告げられた。
その地域に15年以上暮らす匿名の住民(51)は、数百人もの住民が危険に曝されていたという事実に対して大きな怒りをおぼえると話す。
「私たちは、この事実をただの手紙で知らされました。当初その手紙には、区議会は土のサンプルを取る必要があるとだけしか書いてありませんでした」
「その後しばらく経って、私たちの地域の土には多くの化学物質が含まれていると知ったのです」
「私はここで3人の子どもを育てましたが、彼らは庭で泥遊びをし、私の庭いじりをいつも手伝っていたのですよ! 子どもが毒でいっぱいの泥で遊んでいたとは、信じられない思いです」
また、3人の子どもの母親であるトニ・ウィリアムソン(37)は、地元紙「ケント&サセックス・クーリエ」に次のように話す。
「事実を知った時、震え上がりました。私の子ども達が安全に庭で遊ぶことができないと思うと、本当に怖いです」
「今は子どもたちを24時間見張らなければいけないと思うと、強いストレスを感じます。また、ペットが庭の土を掘るのを、どうやったら止められるというのでしょう?」
タンブリッジ・ウェルズ区議会の発表によると、この地域では、かつて小屋や温室を建設するための木材を、クレオソートやタールのような物質で処理し、保存していたようだ。同時に「これらの物質は今も土に残存している可能性があり、それを大量に体内に入れることは健康に影響を及ぼす」との声明も出ている。また、納屋を作るための資材としてアスベストが使われていた可能性もあり、その件も調査中であるという。そして区議会は、住民たちに対して資産を売ることが難しくなる可能性があることを告げた。
環境長官のゲイリー・スティーブンソンは、こう語る。
「我々はこれが非常にデリケートな問題であると理解しています。また、住民と家屋のオーナーが全ての情報を知らされることも、とても重要です。住民と家屋のオーナーには、個人的にもしくは手紙で連絡を取っており、ミーティングも2回行いました。住民の方々には常に情報を知らせ、もし質問があれば答えるようにしています」
現在、区議会は6月に土のサンプルを集め、8月に住民たちに分析結果を報告する予定である。
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