恒例の岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展が開催中である。これは「芸術は爆発だ」という名言で知られる岡本太郎の精神を継ぎ、自由な視点と発想で現代社会に鋭いメッセージを突きつけるアーティストを発掘かつ応援しようと設立された公募展。1997年から始まり、形式、年齢を問わず、美術ジャンルも超えて、毎年、個性豊かな作家たちを輩出しているのだ。本賞は今回で20回を迎え、応募総数499点のなかから、ずば抜けた26名(組)のアーティストが入選を果たしている。
会場に入るなり、飛行機の轟音が鳴り響き、眩しい閃光が走った。一瞬何が起こったのか、誰もがキョロキョロと周囲を見渡してしまう。以前なら、この飛行機音はブルーインパルスの華麗なアクロバット飛行を連想させたかもしれない。だが、昨今の世界状況を背景に聞くと、身近に迫る戦争やいい知れぬ不安を感じさせる。
これは今回、岡本太郎賞を受賞した山本直樹の作品《Miss Ileのみた風景》の一部である。「入口のセンサーが人を感知すると戦闘機の音がして、7秒後に3秒間、5万6千ルーメンのLEDが発光、ガラス張りの展示室は一瞬真っ白になります」と、山本は観客たちを驚かす“ホワイトアウト”の仕掛けを説明する。彼は甘い食物を素材に社会的なテーマを扱った作品シリーズを手掛けており、今回も2020年オリンピックに向けて再開発が進む東京をイメージした「街」を角砂糖で再現している。そればかりか、展示室のガラス面にはグラニュー糖で、他国の独裁者や新聞の見出しなどを描き、現在の世界や日本について考えさせる作品に仕上げている。さらに土日には観客が参加して角砂糖の「街」をさらに拡張していくという。弱々しくうつろいやすいスイートな食物を素材とすることで、作品に込められた社会的なテーマがますます際立つのだ。