【VX・サリン】英国が封印した悪魔の「人体実験」で毒性検査!? 神経ガスの歴史と仕組みの全貌

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●アセチルコリンエステラーゼとは?

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 アセチルコリンは脳内では記憶にまつわる回路で多く使われており、体では筋肉の制御のための神経で多く使われています。神経に動かせという電気信号が伝わってきたら、それを神経の終末部(神経筋接合部)でアセチルコリンが放出されて、筋肉に繋がっている場所でアセチルコリン受容体があり、受け取ると「電気信号来ました」ということで、筋肉が収縮するというわけです。

 もちろんこうした一連の動作を意識的にする必要はなくて、心臓動かしてるナウ、横隔膜ひっぱってるナウと意識してる人はいませんね(笑)。そうした動きはすべて無意識でできるように体はうまくコントロールしているわけです。

 そして、神経の伝達を行うアセチルコリンですが、受け取る側(受容体側)にアセチルコリンエステラーゼという酵素があって(実際にはもう1種類あり)、受容体に入ったアセチルコリンを分解して受容体から引きはがします。そうすることで、興奮状態は終わり、次の情報伝達に供えることが出来るわけです。

 このアセチルコリンエステラーゼが居なくなると、アセチルコリンが入りっぱなしになり、神経がずっとオンの状態になって「これはひどい」ってなっちゃうわけです。つまりは興奮しっぱなしの状態になり、痙攣とかし始めて、それが心臓にいけば心停止とかになるわけです。

 アセチルコリンエステラーゼは1分子あたり、4×10の5乗個のアセチルコリンを分解する能力があります。結構仕事の多い酵素というわけです。ゆえに数が少なく、その数の少ない酵素に結合して機能を奪うことで、毒性が出ます。そういう意味ではサリンなどの有機リン系毒は極めて極悪というわけです。


●治療法

 治療法は、そのままだとアセチルコリンエステラーゼが仕事をしてくれないので、元に戻す解毒剤「ヨウ化プラリドキシム(プラリドキシムヨウ化メチル)(商品名パム静注/大日本住友製薬)」を使用します。また、神経の興奮を抑える「アトロピン」なんかもさらに症状を抑えるために解毒剤として機能します。

 ちなみに他の神経や筋肉に繋がっている部位をシナプスというのですが、

・伝える方を前シナプス
・伝えられる方を後シナプス
・筋肉につながってる場所は神経筋接合部

 と呼ぶということを覚えておきましょう。

 ちなみに、サリンやVXより遙かに少量で猛毒を発揮する「ボツリヌス毒素」は、神経の“前シナプス”に入り込むとその細胞自体を殺してしまうというさらなる根元破壊毒です。細胞が死ねばアセチルコリンの分泌を止めることになります。要するに、アセチルコリンエステラーゼを阻害して興奮状態を止めないように細胞をいじめて殺すのではなく、毒分子1個で1細胞が殺せるくらいの猛烈な作用があるために、サリンやVXなんかより遙かに強力な毒として働くわけです。  
(文=くられ)


●くられ

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 添加物を駆使した食欲の失せるカラフルな料理やら、露悪的で馬鹿げた実験を紹介していく、「アリエナイ理科ノ教科書」の著者、サイエンスライター。公演やテレビ出演なども多数。無料のメールマガジンも配信している。ひっそり大学で先生をしてたりもする。WEBや雑誌での薬と毒関連の連載をまとめた新刊『悪魔が教える 願いが叶う毒と薬』(三才ブックス)が好評発売中。また、アリエナイ理科ノ教科書などの執筆活動の他、漫画や小説の科学設定/監修なども手がけ、そうした活動をまとめた本『アリエナクナイ科学ノ教科書  空想設定を読み解く31講』が発売決定。
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【これまでの猛毒一覧】

・ 青酸カリ「前編」「後編
・ リシン「前編」「後編
・ クロロホルム「前編」「後編
・ 一酸化炭素「前編」「後編
・ 覚せい剤「前編」「中編」「後編
・ トリカブト「前編」「後編
・ タリウム「前編」「後編
・ ドクウツギ「前編」「後編
・ ヘロイン「前編」「後編
・ フグ毒「前編」「後編
毒キノコ
・テタヌストキシン「前編」「後編
・大麻「前編」「中編」「後編
ドウモイ酸
・ヒ素「前編」「後編
・「ドクササコ
・「ライチ
・「暗殺に使われる毒の色々VX、リシン、ボツリヌスetc
 

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