キメセクよりも孤独のエクスタシーの方が気持ちいい――「覚醒剤と妄想とASKA」を石丸元章が語る!
■ご先祖様からドラッグの許しを得る
――そう思うと、昔はドラッグに対して、ゆるかったんですね。
石丸 90年代は、特にゆるかったと言えますね。いろいろ試しましたが、すごく面白かったのが幻覚剤です。ある年のお彼岸に、お墓参りに行ったんですよ。もちろん、墓前でキメてたわけではなかったんですけど、そのちょっと前の時期まで、当時すごく流行っていた幻覚剤をキメまくっていたんです。
お墓の前で手を合わしていたら、突然フラッシュバックして、お墓がシマシマ模様になってグニャンと曲がりだしました。びっくりした自分は、ドラッグをやったことをご先祖様が怒っているんだと思って、『すみません』と心の中で必死に謝ったんです。そしたら、『全然、悪くないよ。好きにしていいよ……』というご先祖様の声が聞こえて来た。『あ、そうなんだ』と思った。よく考えてみたら、人生なんて大して長くない、ドラッグをやろうがやるまいが、いずれ後先なんだよな、と。『自分の命は自分のものだし、人生は一瞬だから、生きている間は楽しみな……』というようなご先祖様の声を聞いて、一気に心が軽くなっちゃったんです(笑)。その時の幻覚は、すごく楽しく感じましたね。
――そこから、ドラッグに対する迷いがなくなったと……。ドラッグって楽しい幻覚もありますが、怖い幻覚もあるんですよね?
石丸 ドラッグをキメて、ふわふわと気持ち良くなるなんていうのは、ハッキリ言って浅い。極限の孤独と死の中に自分が浸って怯えている時の冷たい高揚感にこそ、最高のエクスタシーを感じるんです。体の芯、それこそ魂の深奥がゾクゾクするような…。
――映画『ヘルレイザー』は、究極の苦痛が究極の快楽になるというテーマでしたが、そのような感じでしょうか?
石丸 まさに、ですね。快楽が倒錯してしまうんです。だからハマってしまうんですよ。
■芸能有名人がドラッグにハマるワケ
――新著のなかで、「テレビの生放送に出た時の高揚感が、ドラッグをやった時の高揚感に似ている」という表現が面白いと感じました。
石丸 テレビの生放送って、尺が1秒単位で決まっているんです。我々は普段、せいぜい10分とか5分単位ぐらいで行動を計画していて、1秒単位の時間を意識して行動するってことはないでしょう? 1秒間で生きているという圧縮された時間感覚が、どこかドラッグみたいな高揚感を与えるんです。
たくさんのカメラが同時に自分を写して、たくさんのモニターにさまざまな角度の自分が写っていて、それが現実の世界に発信されている……。まるで、合わせ鏡のパラレルワールドみたいですよね? 生放送に出演した時、司会者が『ドラッグやっている時って、どういう感覚なんですか?』て、聞いてきたんです。『生放送って緊張して高揚しますよね。ドラッグはまさにこの感じなんですよ!』と、本当は言いたかったけれど、不謹慎だと思ったので言いませんでした(笑)
――人気に陰りが出て来た有名人が、ドラッグに手を出すというのは、そういった高揚感を求めるからなのでしょうか?
石丸 たとえば、現役時代の清原は、大観衆のなかで拍手をされて歓声を浴びて、皆の期待を一身に背負っているという極限の緊張感の中で『150キロの豪速球が止まって見えた』と言ってるんですよ。これは、まさにドラッグでトリップした状況に似ている。
それは清原という天才が長いアスリート人生のなかで至った一つの境地なんですが、そういった異常な興奮状態を誰にでも簡単に味あわせてくれるのがドラッグなんですよ。栄光の美酒を一度知った人物が、人気や力が衰えたりして、打席に立てなくなったり、コンサートで人が集まらなくなったり、生放送に呼ばれなくなったりした時、心にぽっかりと穴が空いたように感じたとしても無理はない。その空虚さを埋め合わせるのに、ドラッグというピースがピタッとはまってしまう、そういうこともあるでしょう。
■キメセクは気持ちいい?
―― 一般の人がドラッグをするのは、「セックスでより快感を得たい」とか、「ほんの好奇心から」といった理由が多いと聞きますね。
石丸 だけど、覚醒剤によるセックスいわゆる『キメセク』って壮絶なんですよ。無限にイキッぱなしになる。でも、それは通常の意味での「気持ちいい」といった快感ではないんです。意識ごと、あるいは存在ごと、どこかにイッちゃっている感じ。死んでいるんだか、生きているんだか分からない状態に陥ってしまうんです。
――最新の科学では、普通のセックスでもイク瞬間は脳が変性意識状態になる。いわゆる瞑想の極地に入っていると言われていますよね。
石丸 キメセクは、変性意識状態が長時間に渡り続く……といった感じなのかもしれません。でも、気持ちいいって普通なら幸せを伴うじゃないですか。キメセクで『イクイクイク~!』と、イキッぱなしで叫んでいる状態は冷静に考ると『これ、本当に幸せなのか?』と、思えたりもする。キメセクの恍惚というのは、かなり倒錯した状態だと思ってます。
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2024.10.02 20:00心霊キメセクよりも孤独のエクスタシーの方が気持ちいい――「覚醒剤と妄想とASKA」を石丸元章が語る!のページです。石丸元章などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで