キメセクよりも孤独のエクスタシーの方が気持ちいい――「覚醒剤と妄想とASKA」を石丸元章が語る!
■ドラッグ依存症の悲惨な末路
――ここまで、ドラッグ摂取の感覚についていろいろお話をしていただきましたが、ドラッグのせいで悲惨な最期を遂げた方っていらっしゃいますか?
石丸 たくさんいますよ。一昨年死んだのが、『スピード』にも自分の相方として登場した『ギター男』です。彼は以前に覚醒剤で捕まっているんだけど、その後、脱法ドラッグにハマって、病的な妄想状態に陥ってしまったんです。最終的な死因は、ガソリンと向精神薬の大量摂取でした。実は、ガソリンはドラッグとして吸えるんです。
――ロシアの貧困層に出回っている「クロコダイル」は、ガソリンなど価格が安い原料で作られていますね。ですが、人体が腐るなどひどい副作用を伴うので、今、深刻な社会問題となっています
石丸 まさしくそれですよ。日本のロックバンドBLANKEY JET CITYの『ガソリンの揺れ方』というとてもかっこいい歌があるんです。『自分の命揺らしているだけ~♪』というフレーズを聞くと、ガソリン吸っている人の歌に聞こえてきてゾッとすんですよ。全然違う意味だとは思いますけどね。
――『ギター男』さんは、いわゆるボロボロのアパートで孤独死という状況で発見されたのでしょうか?
石丸 彼は、実家が裕福でね。親とは別居しているけれど、1人で広い家に住んでいたんです。そこへ、お母さんが週に2回、ご飯作りにお小遣い持ってやって来る、という生活を送っていたんです。
――うわーっ。ダメ人間ですね。
石丸 ダメでしょ。でも、それが最高でしょ(笑)。ある日ね『ギター男』のお母さんから電話かかって来たんです。『ベッドの下から大量の脱法ドラッグの袋が見つかった』って。で、心配して友人の自分に相談して来たんです。実は、最初に彼に脱法ドラッグを教えたのは、自分だったんですが『そうですかー。実は、だいぶ前からハマっていたんですよね』と、すっとぼけて彼のこれまでの悪行を全部バラしてやったんです(笑)
そしたら、お母さんは泣きながら『毎日毎日、小遣いが足りないから5千円よこせと言って、殴ったり蹴ったりして来たので、しょうがないので渡していたら……そういう理由だったんですか』と。彼が死んでから線香をあげに行きましたが、お母さんの顔を見たら申し訳なくて、頭が上がりませんでした……。
――豪邸に住んで親から小遣い貰って覚醒剤を買う……まるで女優・三田佳子の息子みたいですね。
石丸 ドラッグやってる人間のなかには、親が裕福な人が割と多いんです。三田佳子の息子もそうだし、のりぴーの元夫・高相祐一だって裕福な家で育ってる。薬物の精神病院に行くと、一方に親が裕福な人がいて、一方に生活保護の人がいて、というように、2つに分かれてます。ドラッグを使用したら基本的に働けなくなるので、裕福な親からお金を出してもらうか、生活保護のように国の税金等から生活費を得なければ生きていけないんですね。
――薬物依存症は、たとえばギャンブル依存症など、他にも依存症を持っていたりするんですか?
石丸 一般的には、薬物依存は薬物だけに依存していてギャンブルに依存はしないですよ。ギャンブルやる金があったらドラッグを買いますから(笑)。実は、盗癖(クレプトマニア)、窃視(ピンク)、ストーカーなんかも、行為依存を患った依存症だという考え方があります。自分が入っていた薬物依存の病棟も、薬物依存だけでなくて、シンナー、アルコール、睡眠薬、ギャンブル、痴漢、クレプトマニア……というように依存症と名のつくありとあらゆる患者が、日本中から集まっていました。ただ最近は、入院患者の半数がストーカーとピンクになっていると聞いてます。
――それは、ストーカーやピンクが増えたということですか?
石丸 いや、それはそこの病院での臨床実験もあって、今はそういう患者さんを受け入れたいという意向があるんだろうと思います。新著でも書いてありますが、ASKAさんと自分が入院していた2014年の春~夏頃は、危険ドラッグの蔓延がピークを迎えていたので、薬物依存症が多かったです。入院患者の約半数が脱法ドラッグ依存、3割が覚醒剤依存、残りの2割は、シンナーや睡眠薬、風邪薬、アルコールの依存。だけど現在は、取締が厳しくなったので脱法ドラッグ依存はほぼ0となったらしいです。
■大麻(マリファナ)合法化について
――最近、カナダで大麻(マリフアナ)の使用を、2018年半ばまでに合法化するという動きがありました。大麻についてはどうお考えでしょうか?
石丸 大麻はいいものですよね。たしかに、最近では世界的にマリファナをOKにしようという流れがありますし。ただ、自分の立ち位置としては、他がどうであろうとその国の法律だけは、尊重しなくてはいけないと考えてます。なぜなら法律は、その国の歴史ですからね。
中国みたいに、大麻を持っただけで死刑という国もあります。なぜかというと、中国では過去に、海外から持ち込まれたドラッグによって国が滅びそうになり、アヘン戦争(1840~42)が起こったという歴史があったからです。
自分は、大麻は本質的に悪い物質ではないと思っています。だけど、元チェッカーズの息子たち(注2)のように、法律に反して若いうちに捕まって人生台無しにするのは愚かです。だから、よくよく気をつけなさいとは言いたいですね。
(注2)元チェッカーズのギタリスト・リーダーの武内享の長男(当時21)と次男(当時18)が。2015年6月大麻取締法違反の容疑で逮捕された。高校3年生だった次男は、同級生の少年に大麻を販売し、「大麻高校生」と世間に衝撃を与えた。長男は、2016年6月、大麻所持の疑いで再逮捕される。
■ドラッグはやるべきか?
――もし、「ドラッグをやってみたい」という人がいたら、石丸さんはどうされますか?
石丸 『覚醒剤は、やめたほうがいい』と言いますね。自分がこうやって本を出しているのは、非常にマレな例なんです。覚醒剤によって、貴重な体験をするかもしれないけど、失うものがデカいし、2度と元には戻れない。死ぬ人も多い。それに、簡単にはやめられない。
大麻だって、本質的には悪ではないと言っても、大事故を起こした人もいますからね。むろん、お酒も同様です。
だから、まずはよく調べてほしいんです。ネットだけじゃなく、本でも調べてください。ドラッグを扱った良い本がたくさんあるのでよく読んで、いろいろな人の意見を参考にしてから考えるといい。
そして、法律は尊重することです。あと、成長途中にある未成年のうちは、絶対にやめたほうがいいでしょうね。
――「薬物依存症は治らない病気」とも言われていますよね
石丸 薬物依存症の人は、立ち直ろうとして何度も捕まってしくじって、そのたびにそれまでの苦労が台無しになる。だけど、そこから立ち上がろうとする限り、人生は決して終わりじゃない。だから、いま薬物依存症だとしても落胆する必要はありません。治らない病気を抱えて、人生を一生懸命に生きている人は薬物依存症以外にもたくさんいます。だから、『病気を抱えながらも、人生を充実させて生きればいい』と、そう提案したいですね。
自らも薬物依存症を体験し、克服した石丸氏の励ましは、薬物依存症で苦しんでいる多くの人たちの希望になるだろう。世界で大麻が合法化の流れが来ている今、日本もいよいよ大麻合法化の時代がやってくるかもしれない。だからこそ、ドラッグを恐ろしいものとただ遠ざけるのではなく、しっかり向き合って正しい知識を得ることが大事なのだろう。
出版記念インタビュー第2回目は、石丸氏に「ドラッグと妄想」そして、入院仲間であるASKAが抱いた妄想の正体を赤裸々に語ってもらう。
(取材・文=白神じゅりこ)
石丸元章(いしまる・げんしょう)
1965年生まれ。法政大学中退。作家。GONZO・ジャーナリスト。80年代から、『ポップティーン』、『GORO』などの雑誌に寄稿。96年、自身の経験をもとに描いた私小説的ノンフィクション『スピード』を出版、ベストセラーとなる。2014年より土木系総合カルチャー誌『BLUE,S MAGAZINE』の主筆を務める。その他の著書として、『アフター・スピード』、『平壌ハイ』、『DEEPS』、『 KAMIKAZE神風』、『fiction! フィクション』など。訳書にハンターS. トンプソン著『ヘルズエンジェルズ』。
【イベント情報 4月22日】
『覚醒剤と妄想 ASKAの見た悪夢』出版記念 極・妄想的トークLIVE
【出演】
石丸元章(GONZO作家)
磯部涼(音楽ライター)
角由紀子(編集者)
2017年4月22日(土)
開場 18:30 / 開演 19:00
前売¥2,000- / 当日¥2,500-
※ワンドリンク(500円)別
〒160-0022 新宿区新宿5-12-4 リーレ新宿ビルB1
場所・http://lefkada.jp/
チケット・チケットはコチラ
あのベストセラー『スピード』の著者・日本のGONZOこと石丸元章待望の新刊『覚醒剤と妄想 ASKAの見た悪夢』出版を記念し、新刊『ラップは何を映しているのか』(共著)が話題沸騰中の音楽ライター・磯部涼、オカルト系WEBマガジンTOCANAの編集長・角由紀子をゲストに迎え、「妄想のおもしろさ」を語り尽くすトークLIVE。合い言葉は「妄想を創造せよ」。本には書きたくても書けなかった本当にヤバい話、しちゃいます。
※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。
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