「小林伸一さんは、数年前から自分の家の内外をマジック一本で装飾するようになりました。彼の作品を観たいという訪問者はたいへん歓迎してくれて、以前にバスツアーを組んで訪れたこともあります。彼はいろんな仕事を転々とした末に59歳でリストラされ、退職してノイローゼとなり、さらに大病を煩って、絶望のどん底に転落したことがありました。そんなときに、マジック一本で自分の家の壁から電化製品まで、すべてにカラフルな文様を描き始めたことで元気を取り戻したんです。彼の絵のモチーフは縁起を担いだものが多く、ハートマーク、お金が増えるように宝船などが使われています。今回の展示作品は、小林さんの自宅の天井に貼られていた270枚の作品を持ってきて、ギャラリーの入り口付近を埋め尽くしました。彼の作品には、自分の人生をもう一回やり直したいという意味も込められてると思いますよ」
小林もまた描き続けることに生き甲斐を見いだした一人だろう。彼は、展示のオープニングで公開制作も行っている。