「クシノテラス快感1周年記念企画展(笑)、快感となっている通り、エロを前面に出しています。障害者を扱う一般的なアウトサイダー・アートではエロというテーマも排除されてきました。でも、『性欲スクランブル』では、とある老人が自らの妄想を具現化し、蝋人形師に作らせたという性器蝋人形コレクション(都築響一所有)、それに加えて広島県の3人の作家、1万冊以上のエロ本収集家・向井東冥さん、スナック『ジルバ』で自作のからくり人形芝居や卑猥な木彫り像を披露する城田貞夫さん、成人向け雑誌を短冊状に切ってパイプを作り続けた愛煙家の半田和夫さんを取り上げています。特に半田さんは去年5月に亡くなり、生前には面識がなかったので、膨大な作品が残されたお部屋を見せてもらったときには、まさにヘンリー・ダーガーを発見したネイサン・ラーナーのような気分でした」
櫛野はそう興奮ぎみに語った。それらの作品を通じて、あらためて、誰もがアウトサイドで生きていることに思いを巡らせて欲しい。そういう意味で、櫛野が切り開いたアウトサイダー・アートの世界は僕らを映す鏡として、「自由に生きるとは?」「自分の好きなように生きるとは?」といった根本問題に気づかせてくれるのである。
(写真・文=ケロッピー前田)
櫛野展正(くしの のぶまさ)
キュレーター。1976年生まれ、岡山大学教育学部卒。社会福祉施設勤務を経て、2012年から2015年まで、アールブリュット美術館・鞆の津ミュージアムのキュレーターを務める。現在は独立し、ギャラリー「クシノテラス」を営む。主な展示に「ヤンキー人類学」「花咲くジイさん~我が道を行く超経験者たち~」「スピリチュアルからこんにちは」、主な著書に『ヤンキー人類学 突破者たちの「アート」と表現』『シルバーアート 老人芸術』など。初の単著『アウトサイドで生きている』が絶賛発売中。
■新刊情報
櫛野展正『アウトサイドで生きている』(タバブックス)
[主な内容] 日本唯一のアウトサイダー・キュレーターが伴走する街の表現者たち。驚異のアートと人生の記録!! 話題の自撮りおばあちゃん、武装ラブライバー、昆虫の死骸で観音像をつくった男、仮面だらけの謎の館、雑草を刈りアートにする路上生活者、食べたものを記録し続ける男……18人の表現者たちの豊かな生きざまを追う!
[出版社からのコメント] 今、注目される「アウトサイダー・アート」。しかし「障害がない」がゆえに既存の福祉制度では取り上げられず、世の中から評価されないまま表現活動をする人々がいます。長年福祉現場で働き、福祉と芸術の狭間にある表現を紹介し続けている著者がそんな「周縁アーティスト」の人生に迫った渾身のドキュメンタリーです。
[目次] はじめに/「クイーン・オブ・セルフィー」西本喜美子/「妄想キングダム」遠藤文裕/「隠密ツーリスト」熊澤直子(忍者ぶきみ丸)/「怪獣ガラパゴス天国」八木志基/「昆虫メモリアル」稲村米治/「ラーテルになりたい」ラーテルさん(あなぐまハチロー)/「ドローイングディズ」辻修平/「路上の果て」爆弾さん/「お水のカラクリ道」城田貞夫/「極彩色のラッキーハウス」小林伸一/「落書きラビリンス」野村一雄 /「進化するデコ街道」山名勝己/「ヲタの祝祭」 武装ラブライバー(トッテイ)/「記憶を包む極小絵画」大竹徹祐/「草むらの親善大使」藤本正人/「あの味を忘れない」小林一緒/「進化を続ける愛の砦」大沢武史 /「仮面の奥の孤独」創作仮面館/「アウトサイダー・キュレーターとは誰か」解説=花房太一/おわりに
詳細はコチラ→ http://tababooks.com/books/outside
■展示情報
クシノテラス快感一周年記念企画
『性欲スクランブル』
会期:2017年4月30日(土)~10月9日(月祝) 13:00~18:00
※都築響一の性器蝋人形コレクション・向井東冥は下記日程で一部展示替えがあります。
【前期】2017年4月30日(土)~7月17日(月祝)
【後期】2017年7月22日(土)~10月9日(月祝)
開館:土曜・日曜・祝日・月曜 ※6/3(土)、6/4(日)、7/1(土)、7/2(日)は休館いたします。急遽休館する場合もありますので詳細はお問い合わせください。
観覧:一般 1,000 円 ※18歳未満の方はご入場いただけません(会場にて年齢のわかるもの<免許証等の身分証>をご提示いただく場合があります)
クシノテラス
〒720-0803 広島県福山市花園町2丁目5-20 2F
お問い合わせ:TEL 090-2094-2652
公式サイト http://kushiterra.com/
ケロッピー前田
1965年東京生まれ、千葉大学工学部卒、白夜書房(コアマガジン)を経てフリーランスに。世界のアンダーグラウンドカルチャーを現場レポート、若者向けカルチャー誌『ブブカ』『バースト』『タトゥー・バースト』(ともに白夜書房/コアマガジン)などで活躍し、海外の身体改造の最前線を日本に紹介してきた。近年は、ハッカー、現代アート、陰謀論などのジャンルにおいても海外情報収集能力を駆使した執筆を展開している。前田亮一『今を生き抜くための70年代オカルト』(光文社新書)が話題に。新刊『クレイジートリップ』(三才ブックス)絶賛発売中!
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