ネコは家畜を“演じて”人間を利用している!? ネコがいかに世界を制覇したか古代DNAで判明、科学者「彼らは最初から完璧だった」
南極を除くすべての大陸を制覇した動物の一つ、ネコ。そのルーツは野生のヤマネコであるが、気むずかしく孤独に暮らすヤマネコがどのような経緯でイエネコ(飼い猫)へと変化したのか、その経緯にはいまだ謎も多い。だが今月、ネコの「家畜化」の謎を解き明かす新たな論文が発表されて話題となっている。
■ネコと人間の長い歴史
話題の論文は今月19日にオンラインジャーナル「Nature Ecology & Evolution」で公開された。ベルギーとフランスの共同研究チームは、約9000年前から現代までのネコのミイラや化石など300点以上のサンプルを集め、そのうち約200のサンプルのミトコンドリアDNAの解析に成功した。結果、イエネコが広まった二つのルートが示された。
現代のイエネコのルーツはアフリカ北部やアジア南西部に生息するリビアヤマネコ(Felis silvestris lybica)とすでに判明している。ヤマネコには他にも4つの亜種がいるが、リビアヤマネコは従順で社交性の高い性格をしているといわれている。
論文によると、ネコと人類の出会いは今からおよそ一万年ほど前にさかのぼる。チグリス川とユーフラテス川の流域からシリア、パレスチナを経てナイル川の流域までを含む、古代文明が栄えたいわゆる「肥沃な三日月地帯」で、人間はネコと出会った。出会いのきっかけは農耕だといわれている。餌を求めたネズミが畑や人里にすみ着くようになり、ネズミを狙ったヤマネコたちも姿を見せるようになった。人間は害獣を狩ってくれるネコと共存し、時には世話をするようになった。紀元前7500年ごろのキプロス島の遺跡からは、ペットと見られる埋葬されたネコが発見されている。ただし、同時代にはネコを食べていた形跡も残っている。
そして数千年後、紀元前1700年ごろのエジプトでネコの大ブームが起きた。よく知られているように、ネコは神格化され、死ぬとミイラとして保存された。エジプトで人間になれたネコたちは飼い主と共に移動し、古代ギリシアやローマへと支配を広めた。これが第二のルートである。エジプトのネコたちの子孫は、やがて船に乗って世界各地へと散らばっていった。
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