現代では再現不可能なロストテクノロジー…日本刀の最高傑作「大包平」が素晴らしい理由とは?
■現代では再現不可能な作刀技術
刀匠包平は平安時代末期、備前国(現在の岡山県東部)で活動していた刀匠です。備前国には包平の他にも高平(たかひら)、助平(すけひら)という別の名刀匠が同時期に存在しており、3人併せて「備前三平」などと呼ばれていたようです。この中でも現代に残されている刀が多く、知名度も高いのが包平でした。
さて、刀剣評論家や愛好家から「国宝中の国宝」とまで呼ばれる、この大包平の何がすごいのか。日本刀の評価のひとつである、美術品として見た外見の美しさもさることながら、刀身が長いだけでなく幅広(刀身の横幅が広いこと)に作られた太刀であるにも関わらず、重量がとても軽いことが挙げられます。
大包平の刀身のみの重さは約1.35kgと、太刀としては非常に軽いもので、江戸時代の一般的な長さの打刀(刃長約60~70cm。大包平は刃長約90cm)の刀身に、時代劇で見られる日本刀と同じような柄や鞘、鍔などの拵えを付けたものとほぼ同じ重量です。
これは他の同じ大きさの太刀に比べて、大包平の刀身が薄く作られているためで、その分だけ重量が減っている、という寸法です。
このように刀身が薄く軽く丈夫に作られているだけではなく、刀身全体の重心バランスが良いため、重さを感じず振るいやすくなっているという神がかり的な作刀技術でもって、大包平は高い評価を得ているのです。
また『日本名刀大図鑑』(新人物往来社)によると、現代の刀匠が同じ幅と長さの太刀を作るとなれば、強度を保つために刀身を厚くせざるを得ず、どうしても2kg以上の重さになってしまうとのことです。
刀匠包平がどう思っていたかは想像するしかありませんが、大包平が「会心の出来」とされる理由は、ある意味では「包平自身であっても、もう1度同じものが作れるとは思えない奇跡の刀」ということなのかもしれません。
今回はこのぐらいに致しまして、次回は大包平という刀のエピソードや、大包平に付けられた価値についてご紹介して行きたいと思います。
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