ギャグ漫画の鬼才・谷岡ヤスジの“幻の劇場版アニメ”のフィルムが発見される! 日テレ版『ドラえもん』との関係も発覚!
公開前のラッシュ・フィルムを観た谷岡ヤスジにも好評で、お気に入りのムジ鳥が動いているのを見て涙がにじむほど感激したと聞く。生み出したキャラは我が子同然なのだ。だが内容が内容だけに、映倫の指摘で11カ所がカットされ、ラストの割腹シーンは前年に起きてまだ衝撃の冷めやらない三島由紀夫割腹自殺事件を連想させると撮り直しを強いられる。公開版だって十分過激なのに「ノーカット版はアレ以上?」と改めて驚いてしまう。
現在では考えられないユルイ時代で、作品は成人指定ではなく一般公開された。だが劇場にはムジ鳥ではなく閑古鳥が鳴き、2週上映の予定が1週で打ち切り。評論家たちも「時流に乗っただけの、内容も何もない愚作」などと酷評ばかりで、東京テレビ動画も直後に解散。作品は邦画史からもアニメ史からも忘れ去られた。
そして2014年、谷岡ヤスジ未亡人(『宇宙猿人ゴリ』のヒロインを演じた女優・小西まち子)から委託を受け、谷岡作品の版権管理をしているソニー・デジタルエンタテインメント・サービスがネガの原盤を入手し、東京国立近代美術館フィルムセンターへ寄贈した。これが同館での上映に至った経緯だ。
さて、この作品のプロデューサー・渡辺清とは、なかったことにされている日本テレビ版『ドラえもん』を制作した日本テレビ動画の社長・新倉雅美の本名だ。実はテレビ朝日系で放送を開始する1979年より6年前の1973年に『ドラえもん』は日本テレビ系で放送され、不人気により26週で打ち切られていた。現在この「日テレ版」は、小学館と藤子プロは一切関知せず、再放送やソフト化の道が閉ざされている。渡辺清は『やっちまえ‼』の上映終了後に日本テレビ動画を立ち上げ、日テレ版『ドラえもん』を制作するも、放送途中で放り出して失踪。それから13年後の1986年に拳銃50丁をフィリピンから密輸した疑いで逮捕された。現在、渡辺清の消息は途絶え、日本テレビ動画もすでに存在しない。
こうした不遇の作品ゆえ、いまだに40年前の酷評が独り歩きしている『ヤスジのポルノラマ やっちまえ‼』。谷岡ヤスジの作品は、単なるエログロバイオレンスではない。その不条理さの中には、我々凡人が考え及ばない哲学が内包されている。天才・谷岡ヤスジのキャラクターがアニメーションで動く、それだけでもアニメ史上に残る奇跡の作品だ。今こそ再評価される時が来た。初ソフト化が待たれる。
※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。
人気連載
“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】
現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...
2024.10.02 20:00心霊ギャグ漫画の鬼才・谷岡ヤスジの“幻の劇場版アニメ”のフィルムが発見される! 日テレ版『ドラえもん』との関係も発覚!のページです。ドラえもん、封印映画、ヤスジのポルノラマ やっちまえ!!、谷岡ヤスジなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで