リドック症候群 ― 動くものしか見えなくなる謎の病「私が見ている世界はとても奇妙」
■謎多きリドック症候群
神経心理学者のジョディ・カルハム氏らによる脳fMRI検査などを受けた結果、ミレーナさんは「リドック症候群」と診断された。リドック症候群は静止した物体を知覚できないが、動く物体は認知できるという不思議な症状を示す。1917年に第一次世界大戦で頭部を負傷した元兵士で初めて報告されて以来、世界でも数例しか報告されていない珍しい病気だ。
ミレーナさんの脳の構造や動きを詳しく検査したところ、後頭部あたりにりんご大ほどの脳組織の欠損が認められた。研究者らは彼女の視覚システムは全体がシャットダウンしているのではなく、失った部分を迂回するように再配線が行われ、そのために一部分だけ視覚が機能しているのだと結論づけた。
論文は今年5月に学術誌「Neuropsychologia」に掲載された。またミレーナさんが転がるボールをキャッチする様子などを写した動画も公開された。彼女は動くボールの大きさやスピード、方向を認識できる一方、色については不明瞭で、目の前にいる人が親指を上げているか、いないかを判別することはできない。
ミレーナさんは自分が見ているものを本当に奇妙だと語っているという。だが彼女の非常にレアな経験は、視覚機能の回復について究明する上でも、人間の視覚や認知機能を解明する上でも大いに役立つだろう。
脳とはなんと驚異に満ちた器官なのか。ミレーナさんの事例はそのことを我々に改めて教えてくれる。
(編集部)
参考:「Science Alert」「Neuropsychologia」「Daily Mail」ほか
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