脳は「死」の情報に“確実に”飢えている ― 樹海周辺の新興宗教とオウムと死体について村田らむ氏が激白!
■死んだら終わりで来世はない
――もしかすると、村田さんのようにリアルな死体を見たら何かが変わるんですかね?
村田 死体を見ると誰でも少しは変わります。死体を見ると人間がただの物質でありそれ以上でもそれ以下でもないことがまざまざと知れますから。「死んだら終わりだな」ということがしっかりと認識できる。いわゆる死後の世界を信じている人が死体を見て「死後の世界なんてないんだ!!」って気づくことはあると思います。オウム真理教など、霊や生まれ変わりや死後の世界を信じる人は結局『死んだら永遠に意識がなくなる』というのが怖くって、見てみぬふりしているんですよね。
――信者に死体を見せたら、ハッと覚める人もいるかもしれませんね。
村田 わからないですね。全力で自分を騙せば気づかないかもしれませんね。
■宗教にハマる人は馬鹿?
――では、宗教にハマる人は、賢いのか馬鹿なのかどっちなんでしょうね?
村田 僕の意見ですが馬鹿だと思います。成績が良かろうが、良い学校行ってようが馬鹿は馬鹿ですね。
――不思議ですよね。
村田 ギャルとかホストのインタビューすることがあるんですが、頭が良かったりするんです。でも学校の成績は悪い子が多い。彼らは、いい意味でも悪い意味でも肉体的なんですよ。とても体を使っていて、行動的なんです。彼らにとっての脳は、体を動かすための一器官にすぎないんですよ。つまり、脳みそだけ独立していない。常に体を動かして行動している。脳の命令でケンカして殴り合ったり、セックスしたり、ダンスをして、そしてそこから得た情報を脳にフィードバックさせている。脳だけが単独でアイドリングをしている状態にはなっていない。
――じゃあそういう人たちは話をすると面白いわけですよね。
村田 面白いですね。体と脳がリンクしている人はある意味とても健全なんですね。オウムにはまりやすい人は脳だけのアイドリング状態になっている。というのは体を動かさないで、部屋のなかにこもって脳だけが動いている状態なんですよ。
――でも、オウム真理教は、一応ヨガをやってました。
村田 脳がアイドリング状態になっているからこそ、ヨガをして体を動かすことによって、脳と体をつなげる作業をするわけです。オウムがヨガをしたり他のことをさせたりするのは、脳の中で考えるのをやめさせるためなんですよ。たとえば、お題目を唱えることで、脳で考えるのをやめさせるんです。でも、ギャルやホストのように、やんちゃしている子は常に体を動かしているのでヨガをやることはあまり意味がない。だってサーフィンしたり車をドライブしたり、口説いたり常に頭と体を動かしているのです。勉強をしていないかもしれないけれど、脳を使いまくっている。常に、余計なこと考えている暇がないんですよ。
基本的に暇で、引きこもってたり閉じこもっていたりする人は、宗教にハマりやすいですね。オウムに興味を持って入信する人は、オウムにハマりやすい形をしているんです。だから、オウムが意図的に脳の形を変えて洗脳しているわけではなくて、入りやすい脳の形をしている人がすぽっとハマってしまうんです。
――では、これからオウム真理教の後継団体はどうなるんでしょうかね?
村田 力を持って大規模テロを行って国家転覆を図るとか、そっち方向にはいかないと思います。基本的には修行して自分を変えようみたいな感じなので、いい言い方をすればスポーツクラブみたいになるんじゃないかなと思います。
ただ、過激な思想の信者による小規模なテロはあるかもしれませんが。
――ここまで、樹海からゴミ屋敷、そして孤独死や新興宗教までいろいろ語っていただきましたが、最後に新著『樹海考』の読みどころとTOCANA読者にメッセージをいただけますか?
村田 TOCANA読者はきっと樹海が好きで、樹海のなかでも死体とか怖い話に興味があると思いますね。
ただ、ベーシックに知っておいたほうがいい樹海の知識というものがあるんです。
青木ヶ原樹海は最初から森だったわけでなく、富士山が噴火して流れて来た溶岩の上に木が生えてどんどん樹海になっていったんです。
樹海周辺の新興宗教は、山岳宗教と神道、そしてもともとあった富士山の信仰が混じり合ったり離れたりしてできています。富士山が噴火している様子を眺める信仰が、噴火の熱が冷めてくると富士山に登る信仰に変わって来るんです。そういった、樹海の全体的な成り立ちや歴史を知るのは面白いですよ。
青木ヶ原樹海に興味がある人のなかには、ぼんやりとした部分もあると思うので、この本を読んでもらうとすべての疑問がクリアになると思います。
誰もがいつかは死ぬ。しかし、現代社会はその現実から目を背けていることが多いと感じる。死を覆い隠すからこそ、死に対する歪んだ恐怖から新興宗教に走ることもあるだろう。そして、死を知りたくて渇望しているからこそ、村田氏が撮影したリアルな樹海の死体写真を見たがる人が数多くいるのだ。村田氏にはこれからも独特の鋭い視点で、死についてのテーマを探求してもらいたい。また、我々が踏み込めない危険な領域への潜入取材にも挑戦して欲しいと感じる。そして、漫画家・ライターとして発展し続ける村田氏をこれからも応援したいと思う。
・プロフィール
村田らむ(むらた・らむ)
1972年生まれ、愛知県名古屋市出身。ライター、漫画家、イラストレーター、カメラマン。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教などをテーマにした体験・潜入取材を得意とし、中でも青木ケ原樹海への取材は100回ほどにのぼり20年以上続けている第一人者。
著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ゴミ屋敷奮闘記』(有峰書店新社)、『禁断の現場に行ってきた!』(鹿砦社)、写真集『廃村昭和の残響』(有峰書店新社)など多数。
・イベント情報
村田らむ先生『樹海考』(晶文社)発売記念!!トークショウ&サイン会開催!!ゲストには、事故物件住みます芸人の、松原タニシ先生をお迎えします!
●8月17日(金)書泉ブックタワーで記念イベント開催 ゲスト松原タニシ
公式サイトはこちら
●9月3日(月) ロフトプラスワンウエスト 樹海ナイト~『樹海考』特別編~
【出演】
村田らむ(ライター)
松原タニシ(事故物件住みます芸人)
●9月19~20日阿佐ヶ谷ロフト
村田らむ・松原タニシの樹海VS間取りツーデイズ
・第壱夜『樹海考ナイト』
村田らむ
松原タニシ
ゲストあり
『樹海考』の著者村田らむと『事故物件怪談 恐い間取り』の著者松原タニシが、青木ヶ原樹海で見つけたモノたちを見ていきます!! 新しく発見したシタイもあります。なんと、松原タニシも初発見!!
・第弐夜『恐い間取りナイト』
松原タニシ
村田らむ
ゲストあり
『事故物件怪談 恐い間取り』の著者松原タニシと『樹海考』の著者村田らむが事故物件と、恐い間取りの部屋たちを訪れます!! 『恐い間取り』に登場するあの物件も、あの場所も、見られます!! コワイ!!
(Webサイト)
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