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 表参道にあるギャラリー「GYRE / EYE OF GYRE」にて、『2018年のフランケンシュタイン - バイオアートにみる芸術と科学と社会のいま』展が、現在開催中(10月14日まで)である。

 近年、「バイオ・アート」と呼ばれる、生命を主題や素材にした芸術の潮流が世界的な関心を集めている。この展覧会は、金沢21世紀美術館学芸員の髙橋洋介がゲストキュレーターを務め、5カ国9作家15作品を通して、「バイオ・アート」の最前線の一端を紹介しようというものである。

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 高橋の解説によれば、今年はイギリスの小説家メアリー・シェリーが「フランケンシュタイン」を誕生させてからちょうど200年に当たるという。生命の謎を解き明かした科学者ヴィクター・フランケンシュタインが死者の断片をつなぎ合わせて生み出した怪物は、その後も数々の芸術作品のテーマとなってきた。この作品で提起された「創造物による創造主への反乱」「神に代わり生命を創り出すことの代償」「性と生殖の分離」といった問題は、人工知能や遺伝子組み換え技術が飛躍的に発展する現代、古びるどころかますますリアリティを持って、我々に迫ってきている。本展では「フランケンシュタイン」が提起した問題を「蘇生」「人新世」「生政治」の3つの文脈から読み解いくという。

 まず、第1章「蘇生」から見ていこう。

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ディムット・ストレーブ「Sugababe」2014-©️Diemut Strebe

 ここでなんといっても目を引くのが、ゴッホの左耳の生きたレプリカを彼の親族のDNAを合成することでつくるディムット・ストレーブである。

 予め断っておくと、今回の展示では、生の細胞としての「生きた耳」そのものを見せることは設備やそれに伴う法的許可の問題から難しかったという。そのため、軟骨細胞を提供した玄孫のリーウ・ファン・ゴッホが「包帯を巻いた自画像」を模倣したポートレイト、言語学者ノーム・チョムスキーがゴッホの「生きた耳」に話しかける映像などが展示されている。

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ディムット・ストレーブ「Sugababe」2014-©️Diemut Strebe

 それでも、このプロジェクトに対する興味は尽きない。ゴッホが自ら切り落としたという耳をバイオテクノロジーを用いて現代に蘇生しようということ。それこそが「バイオアート」で何が出来るのかということを強く観客に印象付ける作品だろう。今後、日本でも「生きた耳」そのものが展示できる機会が訪れることを願っている。

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ティナ・ゴヤンク「Pure Human」2016-photo:Tom Mannion©️Tina Gorjanc

 「蘇生」というテーマでは、夭折したファッション界の鬼才、アレキサンダー・マックイーンの皮膚でジャケットをつくろうとするティナ・ゴヤンクの作品も強烈なインパクトで迫ってくる。

 展示されている、まるで人間の皮膚のようなレザージャケットは、豚革を用いた試作品だが、マックイーン本人の体系やホクロ、さらにタトゥーまで再現されており、このプロジェクトが持つ倫理的美学的な意味合いもよく伝わってくる。

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平野真美「蘇生するユニコーン」2014-©️Mami Hirano
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平野真美「蘇生するユニコーン」2014-©️Mami Hirano

 また、本展最年少という平野真美による《蘇生するユニコーン》という作品も見逃せない。これは神話上の生物であるが、骨格、臓器、血管、皮膚まで精密に再現し、瀕死のごとき姿で展示されている。腹部は開かれ、むき出しの臓器には器具が連結されいる。

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