妻が帽子に見える男、脳内ループが4年間、アヴェロンの野生児…! 精神医学で解明できない謎すぎる症例5選!

 これまでの精神医学の歴史の中でも結論が出ていない、なんとも不可解な症例がある。オンラインメディア「Big Think」の先日の記事では、今もなお謎に包まれたままの奇妙な5つの症例を紹介している。いずれも人間存在の複雑さを物語るミステリーだ。


1. アヴェロンの野生児

 1800年に南フランス・アヴェロンの森で発見された少年が“アヴェロンの野生児”だ。保護時には11、2歳であったといわれている。

 文明から切り離された生活を送っていたためか、言葉を話すことも理解することもできずまさに“野蛮人”であった。

5psychologycases1.JPGBig Think」の記事より

 医師のジャン・マーク・ガスパール・イタール氏は少年を引き取り、ヴィクトールという名前を与え熱心に教育を行った。人格は遺伝で形成されるのか、それとも環境が決めるのかという「遺伝環境論争」の格好の研究素材としてヴィクトールは学会の注目を集めることになった。

 教育の成果はなかなか得られなかったが、服を着ることとトイレで用を足す習慣は早いうちに身についたという。しかしこの5年間の教育の甲斐も虚しく、結局のところ、簡単な文字はいくつか書けるようになったものの、言葉を流暢に話すことはできなかったという。

 臨床精神科医で自閉症の専門家であるウタ・フリス氏はヴィクトールが自閉症児であった可能性を指摘している。


2. 妻が帽子に見える男

 脳神経科医で作家の故オリバー・サックス氏の著書『The Man Who Mistook His Wife For A Hat』(『妻と帽子をまちがえた男』ハヤカワ文庫)では、“P博士”という人物の視覚失認症(visual agnosia)の症例を紹介している。視覚失認症は脳の後頭葉や頭頂葉の損傷が原因だといわれているが、見えているものを正確に把握することができないという不可解な症状である。

 例えば妻の顔が帽子に見えたり、人がいない場所でもあちこちに人の顔が見えたりするといったものだ。

「路上で彼(P博士)は消火栓やパーキングメーターを見ると、子どもたちの頭であるかのようによしよしとなでました。また家具のノブにむかって愛想よく話しかけますが、返事がないことに驚きます」(オリバー・サックス氏)

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