妻が帽子に見える男、脳内ループが4年間、アヴェロンの野生児…! 精神医学で解明できない謎すぎる症例5選!

3. ドラゴンばかりが見える女

 医学誌「The Lancet」で2014年に発表された研究では、変形視(metamorphopsia)の一種である「Prosopometamorphopsia」の症状が紹介されている。これを強引に訳せば「顔面変形視」ということになるが、この症状を持つ52歳のオランダ人女性は、人の顔を見ると必ずドラゴンの頭に変貌を遂げることを訴えていたのだ。

“変身”では顔色が黒ずみ、顔全体が長くなり、耳は尖り、鼻が突き出て、爬虫類の皮膚に変わり、巨大な目が黄色や緑や青、あるいは赤に輝くのだという。

 そしてさらに厄介なのは、人の顔がなくともほとんどすべての物に“ドラゴン”の幻覚が現れ、壁や電気のコンセント、パソコンのディズプレイをはじめ、何もみえないはずの暗闇の中からでさえドラゴンの姿が浮き上がってくるということだ。

 専門家たちはこの女性に対してさまざまな検査を試みたが、ドラゴンが見えるメカニズムはいまだに謎のままである。


4. 丸呑みされたい男

 カナダ・トロントの精神病院のドクターからは、自分が巨大な何者かに食べられたいという欲望を持つステファンという名前の45歳の男性のケースが報告されている。いったいどういうことなのか?

 このステファン氏の話をよく聞いてみると、食べられるといっても切り刻まれたり、口の中で噛み砕かれたりするのは御免で、ひと口に丸呑みにされたいということらしい。具体的にはそびえ立つほど大きな女性に丸呑みにされ、胃腸の中を通り抜けて便と一緒に排泄されたいという、なかなかアブない願望である。ちなみにステファン氏には精神疾患を疑わせる要素はない。

 研究者によればこのステファン氏の願望は、生まれる前の状態に戻りたいという欲望が根底にあり、まさに母の子宮へ帰りたいという願いなのではないかと説明している。

 ほかにもステファン氏は糞便や精液になる妄想を膨らますこともよくあるという。こうした存在になってその当人の身体から出てきたいのだという。

 ステファン氏が精神病院を訪れたのは、自分はひょっとしてゲイではないかと憂慮してのことだったというが、ドクターはそれには当たらないと診断している。

 フェティシズムのひとつに生きたまま丸呑みされてしまうシチュエーションを好む「丸呑みフェティシズム(Vorarephilia)」というものがあるが、おそらくステファン氏の願望に関係しているだろう。

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