性的虐待、肉親への憎悪…母娘の念で9人死んだ実話怪談! 川奈まり子の「呪殺ダイアリー」後編
「これで終わりではありませんでした。10歳のときに、母がまた男を引っ張り込んできて、一緒に暮らしはじめたんです。こいつが最悪で……」
「今までの2人も相当酷かったじゃありませんか」
「でも、さらに性質が悪くて、母にも姉にも、もちろん私にも暴力を振るう男でした。しかも私と姉に手を出してきて……。抵抗したら、母が見ている前で、私に5百円玉を投げてよこしました」
「えっ? お母さんは……?」
「男に殴られるのが怖くて黙っていました。しかも、その後、彼が視界から消えるや否や、私を平手打ちしました。おまえが色目を使ったんだろうと言って……。だから私は、こいつも要らないと思ったんです」
男が暴力で母子3人を支配する日々は、そう長くは続かなかった。
家に来てから3ヶ月ほど後、彼は浴室で転倒して死んだ。倒れるときの物音で異変に気づいた母が駆けつけたときには、すでに事切れていた。
恵子さんが「要らない」と願った直後の出来事だったという。彼女は11歳になっていた。
その後、恵子さんの家は村八分になった。
――数年の間に3人も男を引き込んで死なせた女の家。
――前の当主夫婦も。あの娘が出戻ってきた途端に。
――最初の亭主も。次男と三男も。
そんなふうに、集落の人々に噂され、あからさまに避けられるようになったのだ。
いや、前々からひそかに噂されていたのかもしれないが、腐っても鯛、これまでは旧家の威光によって抑えられていたのだろう。しかし遂にダムは決壊したのである。あの家は《穢れ》であると判を捺され、車で1時間も先にある麓の町の方まで悪評が回った。
クラブで働けなくなり、恵子さんたちも学校でつまはじきにされるようになり……。
すると、恵子さんの母は故郷を捨てることを決意した。
何百年も先祖代々暮らしてきた土地だが、もう限界だった。集落に居づらくなっただけではない。近頃では、屋敷は文字通り傾いてきていた。祖父母の代からこの家はずっと火の車で、建物の普請をするどころではなかったのだ。
恵子さんの話を傾聴しながら、私は日本の伝統的な《家》というものを想った。例外はあるが、もっぱら、父から嫡男が継ぐことで保たれてきた男系の《家》。
しかし、恵子さんの《家》を見ると、出ていった長男は帰らず、その他の男は皆、死に絶えた。
私には、恵子さんと彼女の母の呪殺する能力は、この旧家の断末魔に咲いたあだ花に思えた。女たちが《家》にとどめを刺し、始末をつけるのだ――。
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2024.10.02 20:00心霊性的虐待、肉親への憎悪…母娘の念で9人死んだ実話怪談! 川奈まり子の「呪殺ダイアリー」後編のページです。怪談、家、娘、母、実話怪談、川奈まり子、情ノ奇譚などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで