モーゼが十戒を授かったシナイ山の場所が判明? 契約の箱、金の子牛…カオス化する聖地論議!
旧約聖書において重要なキーワードのひとつであるのが“シナイ山”だ。モーゼに率いられてエジプトを脱出したイスラエルの先祖が、神ヤーウェと契約を結び(シナイ契約)、モーゼを介して十戒をはじめとする諸律法を神から与えられた、と伝えられる山である。
■聖書の“シナイ山”はラウズ山なのか?
聖書の出エジプト記には、モーゼはイスラエル人たちを「雷と稲妻が走る炎と煙に包まれた山に案内する」と記述がある。その中を予言者モーゼは神から十戒を受けるために頂上まで登っていくのだ。
だが、歴史家やキリスト教学者の懸命な研究にもかかわらず、今日に至るまでその正確な所在は「中東のどこか」ということしか判明しておらず、詳細は不明なままである。
長らく調査を続けている、米ルイジアナ・バプティスト大学のチャールズ・ホイテッカー博士は、このシナイ山はサウジアラビアに位置するラウズ山(Jabal al Lawz/ヤベル・ エル・ローズ)だと主張する。
ラウズ山はその名の意味である“アーモンドの山”としても知られている標高2,580メートルの、サウジアラビア北東からヨルダンに接する山で、博士の論文は285ページにも及んで聖書内の記述と現代の調査を照らし合わせたものとなっている。
博士は、現地での考古学的な発見、イスラエルからエジプトへ脱出した際の進度を聖書の記述と併せて計算する、という手法を重要視しているが、同時に自分の主張が100%全ての人を満足させるにはまだ不十分であることも渋々ながら認めているという。
もっとも、サウジアラビア当局側は今世紀の初めよりラウズ山の考古学的な調査を開始したが、ラウズ山がシナイ山であることは否定しており、その代わりに山の周辺に他の初期文明が存在した可能性を示唆している。
博士はそういった他の調査機関の結果は知りつつも、自身の調査に自信をうかがわせており、「ラウズ山とその近郊は他の候補地と比較して、聖書の中のシナイ山の記述に一番近いものだと思います」と述べ、例えば、聖書に登場するイスラエル民族によって造られたとされる「金の子牛」像は、実際にラウズ山の下部にある石の祭壇の跡地と関連性が高いことなど「構造やロック(岩)アート、碑銘、自然、土地、周辺地域などの多くの特徴が一致するのです」と語気を強めている。
■反対陣営「シナイ山が実在した根拠はない」
聖書内の記述を検証する作業や結果は年々カオス化してきており、米聖書考古学協会はホイテッカー博士の意見を支持している。さらには以前イランでノアの箱船を、そしてエチオピアで契約の箱(十戒が刻まれた石板を収めた箱)の証拠を発見したとの主張もしており、周囲に波紋を呼んでいるようだ。
加えて秘密裏にサウジアラビアに旅立って、聖書の「出エジプト記ルートを捜し出した」と発表し、ヨルダンのアカバ湾、ティラン海峡がエジプト脱出へのルートに向かう交差点であったこと、そしてラウズ山がシナイ山である新しい有利な証拠を突き止めた、とも同協会はコメントしている。
一方で、著名な聖書考古学者であり近東歴史家であるジェームス・K・ホフメイヤー博士や創造論研究家のゴードン・フランツ氏は「そもそも聖書内のシナイ山が、歴史的、地理的、考古学的に信用できるかどうかのなんら証拠がない」と、これに真っ向から反対する立場をとっている。
どうやら完璧な考証にはまだまだ時間がかかりそうであるが、いつの日か決着がつくのかどうか気長に待ちたいところである。
(文=Maria Rosa.S)
参考:「Daily Star」ほか
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