「魔境に入っていた…」瞑想業界に激震、東大卒僧侶・小池龍之介が解脱失敗を懺悔! 一体どういうことか…徹底解説!

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考えない練習 (小学館文庫)

『考えない練習』、『超訳 ブッダの言葉』などの著書で知られる小池龍之介氏が「還俗宣言」(出家者が俗人に戻ること)をした。小池氏は、昨年秋に「数年後に解脱する」と公言し、『解脱寸前 究極の悟りへの道』(幻冬舎)を上梓し、解脱に向けて路上生活を送っていた

 解脱に向かって突き進んでいたはずの小池氏だが、今月13日から動画投稿サイト「YouTube」に小池氏名義で一連の“懺悔”が投稿されている。映像はなく、ICレコーダーに録音された小池氏の声のみが収録されており、最初の動画「1番目:懺悔1(小池龍之介より)」では、小池氏が46分に渡って自分の罪を懺悔している。懺悔は次のように始まる。

「こんにちは。小池龍之介改めて空朴(くうぼく)という出家名をして、あちこちを遍歴している者です」
「旅を出る前には1年以上7年未満には人間という条件を超えて解脱するだろうという勇ましい言葉を残して旅立ってしまいましたが、今になって思いますと、それは自らの状態を完全に見誤って、おかしなストーリーを信じていたからだと申せざるを得ません」

 動画の声は幾分弱弱しいが、落ち着いており、ひとつひとつの言葉を確かめるかのように慎重に語りかけている。

■悟っていなかったと分かった理由

 では、小池氏の懺悔とは何か?

「自らの境地について実際よりも高く評価したり、またあまつさえ、人にそう言ったりするのは非常に大きな罪でありまして、この場で深々と頭を下げて、懺悔させて頂きたいと思います」

 悟っていないのに悟ったと思い込むことは仏教では「増上慢」と言われ、強く戒められている。小池氏はそのことを懺悔したいというのだ。

「安定した環境で過ごしていられたから、見ないで済んでいたような自分自身の弱さや悲しくなることや不安になることといったようなことに色々直面するにつけまして、そういった弱さがもう十全に克服されているので最後の完成の旅に出ましょうというような元々思い描いていた考えと申しますか、ストーリーというのが思い違いも甚だしいものであるということをよく思い知らされた次第でありました」

●抑えられない性欲

 たとえば、小池氏は性欲をほとんど抑えているという自負があったそうだが、連日のように「エッチな夢」を見てしまい、夢精してしまったという。「性欲が自分のなかに根強く残っていたと思い知らされた」と告白している。

●瞑想スランプ

 だが、小池氏にとって最も辛かったのは、昨年12月頃から非常に強烈なビリビリしたエネルギーの鉛の玉のようなものが腹部に入り込み、瞑想状態に入れなくなってしまったことだという。そのことにより、それまで瞑想によって受け流してきた過酷な状況に耐えられなくなってしまったと語っている。

 小池氏はこのことを「境地を詐称した天罰」だと反省している。瞑想をして解脱するために路上生活をしているのにも関わらず、瞑想ができなくなってしまったのは「生きている意味がないし、なんという悲しみでしょう」と考え、ボロボロと大粒の涙を流してしまったそうだ。そして、「物事がうまくいかなかったら泣いちゃうような弱さが残っていて、その程度に感情的になるんだな」と感じたという。

※『懺悔』動画では、同書のタイトルは編集者が決めたものだとしている。

■路上生活を始めた理由と誇大妄想

 そもそも小池氏が路上生活を始めた理由は「自分の過去世」についての強烈なヴィジョンを信じ込んでしまったからだという。なんと、過去世において小池氏はブッダの裏切り者とされるデーバダッタだというのだ。小池氏によると、デーバダッタは実は裏切り者ではなく、今生においてブッダになり、衆生を救う運命にあった……。そのため小池氏は悟りを完成するために旅に出たというわけだ。

 しかし、冷静になった今となっては「宗教者が陥りがちな誇大妄想の類」だったと振り返っている。禅仏教ではこうした自我の肥大は「魔境に入る」と言われている。

 小池氏は路上生活の途上でこうしたヴィジョンを見なくなり、「夢から覚めた」と語っている。その時は路上を歩きながら、「みんなごめんよ。ブッダになるなんて夢のまた夢。あり得るわけないよね」と呟いて絶望してしまったそうだ。

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画像は「getty images」より引用

■小池氏が魔境に入り込んだ理由を分析

 有名“僧侶”だった小池龍之介氏の突然の懺悔と還俗……。ネット上ではさまざまな意見が飛び交っているが、そもそも小池氏はなぜ魔境に入り、とんでもない誇大妄想を信じ込んでしまったのだろうか? 小池氏が学んでいたテーラワーダ仏教に詳しい現役の仏教修行者X氏に詳しく話を聞いた。

――小池さんの懺悔を率直にどう思いましたか?

「誠実さが伝わってきましたが、誇大妄想の話は驚きましたね。ただ、その予感は前からありました。最初は私も小池さんは良いかなと思ったのですが、カルマの解釈が適当であったり、伝統的な教学に即していないことが書かれていたので距離を置いていたんです。特に昨年出た『解脱寸前 究極の悟りへの道』には引っくり返りました。正直なところ“終わったな”と思いました。それには理由があります。ブッダの十大弟子の1人だったアーナンダ長老は多聞第一と言われるほどブッダの言葉を誰よりも多く聞いていました。しかし、彼はブッダ寂滅後も最終段階の悟り(阿羅漢果)に到っていなかったため、ブッダの言葉をとりまとめる第1回の経典結集に参加できませんでした。そこで、阿羅漢になるために意を決して夜通し歩行瞑想を行いましたが、夜が明けても悟ることはできず、疲労から寝具に倒れこんだんです。すると、その瞬間に悟り、遂にアーナンダ長老は阿羅漢になったのです。アーナンダ長老でさえ自分が解脱する瞬間を知ることはできませんでした。そして経典のどこを読んでも自分の解脱を知っていた覚者なんていません。いわんや小池さんに分かるわけがないだろうと思ったのです」

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画像は「getty images」より引用

 また、小池氏が“魔境”に入り込んだのは決して彼だけの責任ではないという。そこにはタイ仏教が抱える構造的な問題があるそうだ。

「一口にテーラワーダ仏教と言いましても例えばタイとミャンマーでは性格が若干異なります。ミャンマーでは『アビダルマ』や『清浄道論』といった伝統的な教説や注釈書を徹底的に学びますが、全体的な傾向としてタイ仏教の森林派は、『アビダルマ』や『清浄道論』などの仏教哲学を必ずしも重視しない空気があります小池さんはタイの森林派の系譜において修行されたようなので、教学の知識が不足しているのも納得出来ます。ミャンマーのテーラワーダ仏教は極論を言ってしまえば、卓越した波羅蜜(修行)としっかりとした経典、アビダルマの知識があれば師はいりません。自分がどういう状態にあるか、”理論上は”自分で分析することができるからです。しかし、先ほど申しました通りタイの森林派ではそういったベースとなる仏教哲学を”必ずしも”重視しない傾向がありますから、『瞑想だけしてればいい』という考えに外国人修行者は特に陥りがちです。すると自分の経験が絶対化してしまいますので、小池さんのように誇大妄想を爆発させた“魔境”に入り込んでしまう場合があります。ただ彼に人を騙そうという気はなかったと思います。本当にそう信じていたのでしょう。私見では、必ずしも仏教哲学を重視しないタイ森林派は、指導比丘(出家僧)がいる僧院といった環境があるからこそ真に機能するものです。それ故に師をとらない状態で学ぶと道を誤った際の早期修正が効きにくいのではないかと思います。たとえば、タイ仏教の有名なお坊さんにアーチャン・チャーという方がおられます。彼の著書は日本語にも訳されていますが、彼は『教学は自分の心から学べ』と言っているんです。これは知識偏重を諌めるための発言だったのですが、これだけ読んでしまうと『瞑想だけでいい』と思ってしまう危険があります

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[増補版]手放す生き方【サンガ文庫】(アーチャン・チャー著)

 路上生活の途中で小池氏が瞑想することができなくなってしまった理由も分析してもらった。

「小池さんが瞑想ができなくなった原因を私なりに考えてみました。瞑想にはいくつかの段階があるのですが、最初の初禅をちゃんと習得していないのに、第二禅を行ってしまうと、初禅さえもできなくなる状態に陥るということが経典で言われています。おそらく小池さんはしっかりと段階を踏まずに瞑想のレベルを上げてしまったため、以前獲得していた瞑想の段階にすら到達できなくなってしまったのではないでしょうか。この解釈が正解かどうかは分かりませんが、少なくとも小池さんに経典と教学の知識があったら、自分の状態について一定の理解を得ることで無駄に苦しまずに済んだのではないかという気がします。ただ、今回、小池さんが自分の力で魔境から抜け出して来られたことは敬意と賞賛に値すると私は思います」

 教学の知識、師の欠如、そしてタイ仏教という特殊な事情が加わり小池氏は道を踏み外してしまったようだ。しかし、彼の失敗から学ぶところも多くあるだろう。小池氏の懺悔に対し、自身も瞑想を実践している哲学者の永井均氏も、「この『懺悔』を聞いてむしろ彼に対する敬意が深まりました。解脱なんかするよりよほど立派なことで学ぶところも多いと思います」とツイッターで発言している。

 今後、小池氏は人に瞑想指導することも、書籍を執筆することもせず、少ない人間関係の中でひっそりと瞑想を続けていくとのことだ。小池氏を無責任だと批難する声もあるかもしれないが、むしろ誠実に自分が増上慢であったと告白し、懺悔した勇気に心から敬意を表したい。

文=S・マスカラス(TOCANA編集部)

3代目TOCANA編集長
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