YouTuberに対するテレビ芸人の本音がヤバすぎる!? 『教養としての平成お笑い史』著者・ラリー遠田×キック対談

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ラリー 長く生き残る人はたぶんそれですよね。時代が変わるたびに自分を少しずつ変化させてアップデートしていくんでしょうね。ただ、そのために事件を起こすっていうのも、普通はなかなかできないですよね。松本人志さんが『ごっつええ感じ』を降板したり、笑福亭鶴瓶さんが生放送で局部を露出したりする、っていうのは。ここでこれをやったら面倒臭いやつって思われたり仕事が減ったりするだろうな、って考えてしまうじゃないですか。

キック 守りに入りたくなりますよね。だから、変に小器用じゃないっていうか、実はこの世界でしかやれない人だからそこまで踏み切れる、っていうのもあるのかな。

 この本の結びのところの「芸人の活動は狭い意味のお笑いだけじゃなくなっていく」っていう話も良かったですね。もともと旅芸人なんてスパイみたいな存在ですからね。どこに行ったって形を変えてやっていくっていうのはあるわけで。

ラリー この本では14の事件を取り上げていますけど、時代順に並んでいて、最後の2個が「又吉直樹、芥川賞受賞」「ピコ太郎『PPAP』が世界中で大ヒット」っていう、テレビの外側で起こった事件なんですよね。それも象徴的です。

キック その1つ前の項目で『笑っていいとも!』の最終回のことが取り上げられているじゃないですか。あそこでテレビが1回終わったんだ、っていうふうに書かれていたのも良かったですね。

●YouTubeの時代

ラリー あの前後の時期から今までのテレビの流れっていうのがいったん終わって、テレビの外で動き出す芸人も増えてくるんですよね。最近、印象的だったのが、四千頭身っていう芸人を取材したときのことです。あの人たちはまだ21~22歳ぐらいで、めちゃくちゃ若いんですよ。そうするともう、普通にユーチューバーの動画を見ている世代なんですよ。

 彼らが雑談で「この前、コンビニでユーチューバーの○○さんを見たんだよ」「マジかよ、すげえな!」みたいなことを話していて。もちろん僕は全然知らない人なんですけど。プロの芸人である彼らが「街でキムタクを見かけた」ぐらいのテンションでそれを話していることにカルチャーショックを受けました。彼らにとっては松本人志もヒカキンも同じようなものなんでしょうね。

キック 営業先でも子供とかに「YouTubeやってます?」ってよく聞かれますもん。それで「やってない」って言うとすごくがっかりされるんです。そういう時代になってきちゃってる。

ラリー 20代ぐらいだと、プロの芸人ですらそういう感覚があるわけですから、10年後、20年後にはその価値観が一般的になっているはずなんですよね。そうなったら「テレビか、YouTubeか」っていう時代じゃなくなりますよね。その世代の人からしたら、全部一緒だから。だから、平成っていうのはテレビの笑いが強かった最後の時代で、今後はそれが変わっていくのかもしれないですね。

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