自分の細胞で“スペア臓器”が作れる時代、ついに到来! 「3Dプリント心臓」の実験成功、ドナーに頼らない臓器移植へ!

■ドナーに頼ることのない移植医療が実現する日

 では、“3Dプリント心臓”の作り方はどのようなものなのか。テルアビブ大学の科学者たちは、まず人間から抽出された脂肪組織の細胞成分と非細胞成分を分離した。

 その後、未分化幹細胞に戻るように細胞を再プログラムし、改めて心臓細胞または内皮細胞になるように促されたのだ。タンパク質を含む非細胞マテリアルは、“プリント”のための“インク”として機能する「個別化されたヒドロゲル」に加工されるとドゥヴィル教授は説明している。

 この技術はまだ初歩的なものではあるが、“プリント”された臓器はすでに医学生の手術の訓練や、複雑な手術の計画を立てる際に実際に使用されているという。ドゥヴィル教授はこの技術が今後10年ほどで主流になり、人間の生体組織を基にして臓器や組織を“プリント”できるようになる未来を思い描いている。

 この“臓器プリント技術”は、3つの基本的な段階を含むという。 第1段階は、例えばMRIによって臓器を詳細にスキャンすることである。2段階では、臓器を1層ずつ“プリント”することで、第3段階では“プリント”した臓器を適切な環境で“成熟”させることだ。これまで心臓はその複雑さと高いプレッシャー耐性のために製造することが特に難しいと考えられてきた。

 そして“臓器プリント技術”は、患者自身の細胞を使用することで免疫拒絶反応の可能性が大幅に減少する。ドゥヴィル教授の最大の希望は、“臓器プリント技術”が臓器提供のシステムを時代遅れにすることにあるという。ドナーに頼ることのない移植医療が実現する日は案外近いということなのだろう。


参考:「Science Alert」、「Haaretz」、ほか

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
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