3年ごとに場所を変えて行われるヒンズー教の大祭・クンブメーラ。なかでもアハラバード・クンブメーラは、45日間に1億人が集まる世界最大の祝祭だ。
2006年の初渡航以降、断続的に滞在し、サドゥ(ヒンズー教の修行僧)やサーカス団、現地の人々の生活を撮影。そして、今年2月、とうとう12年に1度のこの祭りの現場に突撃。全320ページにおよそ300点の写真、3万字超の原稿が詰まった超分厚い書籍、『バガボンド インド・クンブメーラ 聖者の疾走』を刊行し、8月9日から大阪のIMAZINE 2Fギャラリーで写真展を開催中の写真家・名越啓介に、クンブメーラの様子や、撮影時の印象、サドゥたちとのエピソード、インドという、つかみどころのない土地で考えたことなど、話を聞いた。
■新人編集者の熱いオファーから始まった『バガボンド』
ーー『バガボンド』は、2006年から今年2月までに撮影した写真に、旅の盟友である編集者の近田拓郎さんがその顛末をつづった文章を添えた構成です。発端は、近田さんからの突然で熱烈なオファーだったようですね。
名越 『EXCUSE ME』という写真集を出した次の日かな? 渋谷で初めて会ったんです。彼は「インドが好きなんだ」ってずっと言っていて、いきなり「インドに行きませんか?」って誘われた(笑)。どこから1か月後に行くことになりました。
ーー当時近田さんは週刊誌の新人編集者で、費用は近田さんの自腹。年末年始の休暇を使っての渡航だったそうですね。付き合いのなかった編集者個人からこういう形で依頼されることはなかなかないことだと思います。
名越 いきなりこういう話をもらうことから編集者との関係が始まるってありえないから「なんだこの人は?」って思いましたよ。でも、そういうノリは嫌いじゃないので、近田くんが何者かはわからなかったけれど、「せっかく誘われたから1回行ってみよう」って軽い感じで引き受けました。インドには行ったことがなかったけれど、実際に行ったら現場感が面白くて。