中国に「1兆ドルの貿易戦争兵器」があると判明! 発動すると何が起こる!?【米中貿易戦争】

■米国債大量売却は中国にメリットなし?

 世界最大の政治リスク専門のコンサルティング会社「Eurasia Group」の中国実務責任者であるマイケル・ハーソン氏によると、実際にはこのような動き(米国債大量売却)には中国にも大きなリスクを伴い、中国の現在の戦略と一致しないことを指摘している。ハーソン氏は以前、北京で米財務省の担当官を務めていた人物でもある。

「米中貿易戦争は明らかにエスカレートするサイクルにあります。しかし、貿易戦争における現在の北京は、トランプからの圧力に耐えることが可能であると考えています。 そこでまずはダメージからの“回復力”を優先すると考えられます」(マイケル・ハーソン氏)

 こうしたことを考慮すると、米国債の投げ売りは逆効果になる可能性があるという。もし中国が米国債の投げ売りを開始した場合、中国が保有する残りの米国債の価値を破壊することにもなるのだ。

中国に「1兆ドルの貿易戦争兵器」があると判明! 発動すると何が起こる!?【米中貿易戦争】の画像3
画像は「Wikimedia Commons」より

 専門家によれば、中国は今後数カ月で十分なコントロールのもとに人民元安に誘導し、国内から資本を流出させずにアメリカの圧力をやり過ごすことができるということだ。中国としてはアメリカにダメージを与えることよりも、資金流出を避けることが最優先なのだ。またもし米国債を売却すれば、海外からの中国への投資意欲を減衰させるだろう。

 また実際問題として米国債の投げ売りがアメリカにダメージを与えるのかどうか、前出のセッツァー氏は疑問に感じているという。

「米国債大量売却が大きなマイナスの影響を与え始めた瞬間、FRS(連邦準備制度)は敏速に反応するでしょう」(ブラッド・セッツァー氏)

 2012年の議会への報告書でペンタゴンは、FRSは中国が経済的影響を与えるために市場に投入する米国債を“完全に”購入できることを指摘している。つまりアメリカは中国が売った米国債をすべて問題なく引き取ることができるというのだ。

 さらに中国の合計3兆1000億ドルもの外貨準備高の預け先があまり多くないことも“核攻撃”をしそうにない理由になるという。かといって、ドイツ国債をさらに増やしても得することはほとんどないのだ。

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画像は「Wikimedia Commons」より

 中国による米国債投げ売りの脅威は可能性としては残っているものの、当の中国にとってはまだ魅力的な選択にはなっていないとして「CNN Business」の記事は結ばれている。ともあれ今後も引き続き“米中貿易戦争”の行方を注視していくしかないのだろう。

参考:「CNN Business」、「China Briefing」、ほか

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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