ドイツのストリートビューが空白だらけな“本当の理由”とは!? 「裸になる権利」と過去の根深いトラウマに原因が?
■過去の全体主義政権のトラウマ
屋外で裸になることをむしろ楽しむ者が多いドイツなのだが、その一方でドイツ人は個人情報については実にセンシティブであるという。平気でSNSなどのオンライン上で名前、住所、友人のリスト、購入履歴を共有・公開するアメリカ人などの感覚にショックを受けるドイツ人は多いようだ。
ハーバード・ビジネス・レビューでかつて発表された調査によると、平均的なドイツ人は、個人の健康診断データを保護するために184ドル(約2万円)を支払う気持ちがあるという。平均的なイギリス人にとっては59ドル(約6300円)にとどまり、アメリカ人と中国人に至っては、その価値は1桁の数字になるということだ。
人前で気軽に裸になれる人々ではあるものの、個人情報についてはきわめて守りを固めているのはどういうわけなのか? そこにはやはり、過去においてナチス第三帝国と戦後共産主義体制下の東ドイツという2つの全体主義のトラウマを抱えているからであるという。
これらの政権は市民を完全に管理することを目論んでいた。ナチス時代のゲシュタポ(秘密国家警察)、また、東ドイツではシュタージと呼ばれる秘密警察によって人々は厳重に管理、監視されていたのである。この時代の記憶がまだ生々しいドイツでは、国家などの強大な組織に易々と個人情報を渡すことがあってはならないと考えられているのだ。
そして戦後の西ドイツでも、個人情報とプライバシー保護のための法律がいくつも制定された。全体主義国家時代の反動から、プライバシーについての権利意識がきわめて高い社会へと変貌を遂げたのである。
ドイツでは2010年にストリートビューが公式に開始されたのだが、サービス開始前に24万4237世帯から自宅の写真にボカシを入れるように求める声が寄せられたということだ。これではストリートビューが普及するはずもないということになるだろう。
こうしたことを踏まえるとドイツでストリートビューの利用が進まないのはある意味で当然という感もあるのだが、それでもSNSなどで情報を共有することにもメリットがあることを知った若者が増えていることで、ドイツにも徐々にストリートビューが普及する芽は出てきていると記事は指摘している。
ドイツの田舎町の風景をぜひストリートビューで眺めてみたいものだが、ドイツにはドイツなりの事情があることから、これは決して急がなくていい案件ということになるだろうか。
参考:「Big Think」、ほか
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