“音を見る”ことができる盲目の人の脳の謎 ― 「知覚・感覚」は使用される目的によって異なる処理をされる
さらに知見を深めるべく研究チームは今回、習熟した盲目のエコーロケータ―が、音の刺激によって脳内で“地図”を思い描くことができるのかどうかを実験で検証したのである。ちなみに人間のエコーロケーターは超音波の代わりに、舌を鳴らした音の反響音から周囲の状況を把握するということだ。
実験に参加したそれぞれ5人ずつの盲目のエコーロケーター、エコーロケーションスキルのない盲目の人、健常者はfMRIで脳活動をモニターされた状態で、部屋の中のさまざまな地点から響いてくる音を聞き、脳内でその音の発生地点を推測することが求められた。

■脳が持つ素晴らしいポテンシャル
収集したデータを分析したところ、盲目のエコーロケーターの音声情報に対する反応は、目の見える人の視覚情報に対する反応と同じ脳活動であったことが突き止められた。つまり盲目のエコーロケーターは音で地図を思い描き、視覚野を使って音を“見て”いることになる。
これは、解釈される感覚の種類ではなく、感覚の使われ方によって一次視覚野の活動が柔軟な情報処理を行っていることを示す最初の実験結果となった。視覚情報がなかったとしても、音声情報だけでも脳は“地図”を思い描くことができるのである。

近年、科学者たちは、前頭前野などの高次皮質領域は、処理する特定の感覚ではなく、実行するタスクの観点から最もよく理解できることを理解しはじめている。つまり五感で知覚される情報はそれぞれバラバラに処理されているのではなく、何のためにその情報にフォーカスしているのかという目的によって、脳の各領域は柔軟に連携して情報処理を行っているということになる。
実験参加者数が少ないことからまだまだ初歩的な段階の研究であることは研究チームも認めているが、今回の研究は感覚器官を失った場合においても脳は柔軟に各領域を補い、関連する情報を処理しているという、脳の優れた可鍛性(plasticity)が思い知らされるものにもなったという点で大きな意味を持つ。脳が持つ素晴らしいポテンシャルに我々はもっと注目すべきなのだろう。
参考:「Science Alert」、「The Royal Society」ほか
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