史上初! 生まれながらの全盲者が映画監督になるドキュメンタリー『ナイトクルージング』が面白すぎる! 監督・佐々木誠インタビュー「他者とのイメージの共有…」
3月30日より全国での公開が始まった映画『ナイトクルージング』。アップリンク渋谷での初日と2日目は満員御礼。連日盛況で、Webや新聞でもいくつもの関連記事も公開されている。
この映画は、先天性全盲者(生まれつき目が見えない人)の加藤秀幸さんがSFアクション劇映画を監督、完成させるまでを追ったドキュメンタリーだ。本作の監督を務めたのは、『マイノリティとセックスに関する、極私的恋愛映画』(2015年)の佐々木誠。過去にトカナでも紹介したので、覚えている読者もいるだろう。
生まれて一度も物を見たことがない全盲者が、ビジュアル表現が重要になるアクション映画を撮る、という映画史的にも初の試みを追いかけ続けた佐々木監督に、『ナイトクルージング』の企画の立ち上がりから制作時の苦労、作り上げるプロセスから見えてきたことなどについて話をうかがった。
■「面白い視覚障がい者の映画を作ってくれないか」という依頼
――インタビューの前に『ナイトクルージング』の大枠について確認させてください。このドキュメンタリー映画は、加藤さんという先天性全盲者が『ゴーストヴィジョン』というタイトルのSFアクション劇映画を撮りきるまでの経過を追ったドキュメンタリー、という理解でいいでしょうか?
佐々木 そうです。『ナイトクルージング』は、『ゴーストヴィジョン』の監督である加藤くんの映画作りを追いかけたドキュメンタリー。その『ゴーストヴィジョン』も本編に組み込まれています。
――そもそも『ナイトクルージング』を撮ることになったきっかけは?
佐々木 神奈川の視覚障がい者団体から「視覚障がい者の啓蒙映画を作って欲しい」と依頼を受けたことがきっかけです。
――なぜ佐々木さんに?
佐々木 偶然、僕の『マイノリティとセックスに関する2、3の事例』(2007年)を見た人がその団体の理事長の知り合いで、僕のことを紹介してくれたんです。理事長は「障がい者はかわいそうな人たち」という、よくある切り口とは違う内容を求めていたみたいなんですけれど、ほかに声をかけた映画監督から上がってきたのはベタな企画ばかりだったみたいで、「ジャンルはなんでもいいから面白い視覚障がい者の映画を作ってくれ」って依頼されました。それで、実際に何人か会った団体の人たちの1人が加藤くんだったんですよ。
――初めて会ったときの加藤さんの印象は?
佐々木 話したなかでは一番面白い人でした。それで、彼を主役に映画を作ろうと思ったんですよ。団体にはものすごく可愛い女の子がいたから、最初は加藤くんとその子の恋愛劇映画を撮ろうと思いました。ところが、彼女の親御さんからNGが出てしまって。映画に出ることで世の中に知られたら、目の見えない彼女が危ない目に合うことも考えられるということで。
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