史上初! 生まれながらの全盲者が映画監督になるドキュメンタリー『ナイトクルージング』が面白すぎる! 監督・佐々木誠インタビュー「他者とのイメージの共有…」

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■ギャップ噴出の制作現場

――『ナイトクルージング』を作っていて大変だったことはなんでしたか?

佐々木 『ゴーストヴィジョン』の助手的な仕事に労力と時間を割かなければならなかったことですね。『ナイトクルージング』の監督である僕が、『ゴーストヴィジョン』の助監督と制作進行と編集みたいなことを全部やる必要があったから、そのぶん『ナイトクルージング』のことをは後回しになってしまう。できあがったものがすべてだから、言い訳はできないので、『ナイトクルージング』もいつも以上にフル回転で制作しました。でも、若くもないから、無茶していたら制作中に突発性難聴、逆流性食道炎を併発して、白髪も一気に増えて(笑)。まさに満身創痍で仕上げました。

――具体的にどういう作業があったんですか?

佐々木 4チームが作った6パートを最終的に組み合わせるのも僕なんですが、それも、監督が見えないので、いちいち視覚以外の方法で確認しながらで。あとはスケジュール組んだり、こまごまとした修正もそう。『ゴーストヴィジョン』に関わる諸々の調整とか編集とかトラブルの対応とか、他にもいろいろあったんだけれど、この20年間で作ったどの映像よりも大変でした。

――自分の監督作を撮るだけでも大変なのに、2本の映画を同時並行的に作るようなものですからね。加藤さんとシビアにやりあうようなことはなかったんですか?

佐々木 ありました。『ゴーストヴィジョン』の進行状況とか、いろいろなことを加藤くんに説明していた時に、彼が「そんなのわからない」って言ったんです。ちょうど僕のイライラがピークになる直前だったこともあって、「もういい、わからなくていいよ。めんどくせーな」みたいなことを言っちゃった。その時に、加藤くんがすごく悲しそうな顔で、「『めんどうくさい』って言われたらそこで俺は終わりになっちゃう」って。

――それは言っちゃいけない一言だ。

佐々木 そうなんですよ。健常者の間でも「めんどうくさい」って失礼ですよね。友達同士とか恋人同士なら許されることもあるから、それと同じ感覚で言ったんだけれど、彼にとっては他人からの完全拒否、否定を表す言葉だった。

――「お前はここにいる必要がない」って言うのと同じですものね。

佐々木 さすがに、すぐに冷静になって謝りました。でも、その後に「それは友達同士だから言えることなので気にしていない」と、僕を気遣うことを言ってくれて。アイツは大人です(笑)。

――映画の中にもありましたね。加藤監督の提案に対して、「そんな既視感のある画を作ってもつまらない」っていうクリエイターの発言に、加藤さんが「そんなことを言われたら僕は何も言えない」って答えるシーンが。

佐々木 同じような状況は何度もありました。みんなトップクラスのクリエイターだから、誰も見たことがないような映像を作りたい。それがクライアントへの誠意だし、作り手としてのプライドですから当たり前のことですよ。でも、加藤くんにすれば、「今まで見たことないんだから、新しいとか古いとかはどうでもいい。俺がやりたいことをやりたいんだよ」っていうこと。だから、『ゴーストヴィジョン』に関わってくれた人のなかには、「もっと斬新でかっこいいことができたのに」と思っている人もいると思いますよ。

――あの発言者の、視覚障がい者に対して無配慮な感じの悪役っぷりがよかったです。

佐々木 試写会に見えたので、「同じようなことはほかの制作現場のシチュエーションでもあったけれど、代表例として使わせてもらいました。ごめんなさい」って、ご本人には謝りました。「いや、しかたないですよ!」と笑顔で言ってくれて。誠実な人なんです、本当に。

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