史上初! 生まれながらの全盲者が映画監督になるドキュメンタリー『ナイトクルージング』が面白すぎる! 監督・佐々木誠インタビュー「他者とのイメージの共有…」

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■視覚障がい者といかに視覚的イメージを共有するか

――『ゴーストヴィジョン』は6つのシーンを4つの制作チームに分けて、それぞれが違う手法で作っていますね。何か意図があったのですか?

佐々木 最初は予算の問題でした。知り合いの1社でフルCGで作ろうと考えていたんですけれど、それだと予算が足りない。そこから派生して、加藤くんのイメージを1つに固定するのは違うんじゃないか、という話にもなりました。そこで、加藤くんとプロデューサーと話し合って、「フルCGで商業的な方向性もアリだけど、もっとアナログな部分を含めてもいいかもしれない」ということになった。それならチームを複数に分けて作るのもいいかと思ったんです。

――アナログ的な手法での制作の部分を含めたことで、むしろ視覚障がい者の空間認識のしかたや、周囲の世界を把握する方法、そのためにやっている工夫がさまざまかつ具体的に描かれることになったので、結果的によかったのでは?

佐々木 そう思います。

――視覚障がい者と健常者のギャップを理解する材料と、最先端の技術や学問的な知見が豊富で参考になりました。たとえば、国立科学博物館の専門家に「かっこいい顔とはどんなものか?」についてヒアリングするシーンでの「人間の顔は機能的な違いはないのに、文化生殖的には決定的な違いを持つ」というお話とか、目からウロコの連続でした。

佐々木 そういった顔の造形に関する話や色彩の研究者の方たちの話は、個人的にも本当に面白かった。映画監督ではなく、職業映像ディレクターとして別の番組が1本作れるな、とか考えたちゃったりもしましたよ(笑)。

――物の造形や空間の把握といった、健常者なら視覚で捉える部分を触覚や聴覚で代替するためにレゴブロックや粘土を使ったり、フレームを作って触れるようにしたり、視覚障がい者と健常者がイメージを共有するための試みがさまざまに描かれていますね。でも、「色」だけはどうにもならないと思うんです。作中では「色味」「輝度」「彩度」を触れる3Dパレットにして使っていましたが、あれは機能したんでしょうか?

佐々木 そんなに機能はしてないのかも。あのパレットは主に色の濃淡と関係性を表しているんだけれど、加藤くん自身がそれをどう捉えているかは、僕にはなんとも。海は深くなるほど濃くなって暗くなり、冷たくなるという情報を彼は知っていて、それで解釈しているんだけど、僕らと同じ感覚なのかはわからない。でも、イメージの共有はできたんだからいいんですよ。外国人とコミュニケーションする場合と同じ。

――同じというのは?

佐々木 たとえば、僕は中国語をしゃべれないし理解できない。でも、中国人と同じ映画観て同じところで笑ったり、共通の道具を使ってやり取りをして、結果的に意思が通じていることがあるでしょう。それと同じなんじゃないかと。僕の中ではそういう解釈です。

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