史上初! 生まれながらの全盲者が映画監督になるドキュメンタリー『ナイトクルージング』が面白すぎる! 監督・佐々木誠インタビュー「他者とのイメージの共有…」

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加藤秀幸さん

――確かにそのリスクは否定できないですね。

佐々木 それで、加藤くんだけで映画を撮ろうと。たまたま彼とは気が合ったので、普通に遊ぶようになったんです。そんな折に、ジャッキー・チェン作品とか『トップガン』とか映画の話で盛り上がったんですよ。それが面白かった。

――面白かったというのは?

佐々木 同い年だから観てきた映画の記憶が一緒だったというのもあるんだけれど、目が見えないはずの彼が、見える僕と同じように映画を楽しんでいるのが面白かったんですよ。話をしていて全盲者であることを感じさせなかった。僕の場合、映画を作るさいに構造にこだわるから「生まれつき目が見えない人が映画を作る」というアイデアが、そこで浮かんだんです。それと、加藤くんならできると思ったのもあります。

 

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©撮影:大森克己

■視覚障がい者は映画を「観」ている

――『ナイトクルージング』のなかに、何人かの視覚障がい者に好きな映画やその思い出についてインタビューしているシーンがあります。そこで。登場したみなさんが「映画を見る」って言っていたことを不思議に思いました。

佐々木 映画は観るものですよ。

――でも、見るという行為は視覚によるものでしょう。

佐々木 それは視覚があって当たり前だと思っている健常者の捉え方だと思いますよ。映画は聴くものじゃなくて観るものだから、視覚障害者も映画を観ているわけで。視覚に頼らなくても、彼らにとってはそれが観るという行為なんですよ。

――違和感はありませんでしたか?

佐々木 どうだったかな? 今はそれが普通になっちゃったから。でも、映画の話をしている時に、加藤くんはちゃんと映画を観ているって思いました。たとえば『トップガン』のラストのミグとの戦闘シーンの描写とか、頭の中ではイメージとしてできていたんですよ。

――ミグどころか飛行機そのものを見たことがない加藤さんが、目の見える佐々木さんと情報をやり取りして、映画の感想を語り合うことができた。

佐々木 そうです。物を見たことがない人であっても、映画を観てイマジネーションで楽しんでいる。それは、僕らが視覚で見ているものとは違うかもしれないけれど、僕らだって自分の目で実際にミグとF14の戦闘を見ているわけじゃないでしょう。映画という幻を見ている。それが『ゴーストヴィジョン』の「ゴースト」につながるんですけれど、目の前にないものを視覚を通して見ているだけだから。

――そう言われると確かに。

佐々木 映画を目で「確認する」という部分では視覚は必要だけれど、「楽しむ」という部分では視覚障がい者も健常者もそれほど変わらないんだと感じたし、今もそう思っています。

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