史上初! 生まれながらの全盲者が映画監督になるドキュメンタリー『ナイトクルージング』が面白すぎる! 監督・佐々木誠インタビュー「他者とのイメージの共有…」

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■著名声優たちが素人監督の作品に参加した理由

――試写会の最初のあいさつで、「この映画は視覚障害がい者が頑張って映画を作る話ではなく、健常者が頑張る映画です」って言っていましたけれど、あの発言はどういう意味合いだったのですか?

佐々木 いわゆる「障害者が頑張る」系の映画やドラマを期待されることも多いので。僕の中で『ナイトクルージング』は「視覚障がい者が頑張って映画を撮る話」じゃない。映画を撮ろうと思った人がたまたま先天性全盲だったらどうなるか? 目の見えるスタッフがそれにどう応えるか? っていうスポ根ムービー的な側面があります。障がい者についての映画は、当事者がさまざまなハンデや葛藤を乗り越えて何かを達成するような構造が一般的ですけれど、そもそも加藤くんには、クリエイティブにおいての葛藤があまりないから。

――葛藤、ないんですか?

佐々木 ないですよ。映画の中で、葛藤、見えました?

――葛藤のフェーズはすでに乗り越えているんだろうとは思いましたけれど。

佐々木 『ナイトクルージング』はほとんど葛藤なくさらっとできちゃってるから、障がい者が頑張るドラマを期待する人には物足りないかもしれない。登場する人たちが、それぞれのやりかたで知恵を絞って努力はするけれど、映画が作られていく過程だけをシンプルかつ淡々と見せるだけなので。たまたま目が見えない監督の下で、目の見えるスタッフたちがどう動き映画を作っていくのか、それぞれのイマジネーションをどうやって共有していくかを描いた映画なんです。

――あえて、意地悪な見かたをすれば、「障がい者のエゴ、自尊心を満たすために、周囲の健常者が振り回される映画」というふうにも見えますよ。

佐々木 それも否定はしないけれど、その意図はありませんよ。

――山寺宏一さんや能登麻美子さんほか、出演している有名声優さんたちが、加藤さんを持ち上げ過ぎな印象も受けました。加藤さんご自身は嬉しそうでしたけれど。

佐々木 出演者してくれたみなさんが考えていることは、正確にはわかりません。ただ、かりに社交辞令だとしても、もし、加藤くんが「実績のない目の見える新人監督」だったら、あれだけの豪華メンバーが、この仕事を受けることはないかな、と。山寺さんも、能登さんも、ほかのスタッフも、企画に関わった理由には、何か新しい、面白いものが作れるかもしれないという期待があったからだと思う。

――新しくて面白いもの、ですか。

佐々木 山寺さんが「目の見えない監督と仕事をするのは本当に緊張した」って言っていたんです。声優界のトップ・オブ・トップがですよ。一通りの種類の仕事をトップランナーとしてやり尽くしているから、目の見えない監督の作品に挑戦したい、声優としてこれまでにない作品に関わりたいという気持ちがあったから引き受けてくれたのだと思います。

――視覚障がい者である前に、新しい挑戦の場を与えてくれる映画監督だと捉えて参加したわけですね。

佐々木 単純に企画が面白いから乗った、ということだと思います。だから、誰も加藤くんのためにやっているわけではないんです。一方で、加藤くん自身もこのチャンスを利用したとも言える。「目が見えない」という自身の特徴を最大限に生かして『ゴーストヴィジョン』を作った。映画作家になりたいと思っても、なれない人がほとんどなのに、あれだけの豪華メンバーで映画を作って、劇場公開までできたわけですから。そんな監督はほかにいませんよ。その運のよさも、映画監督の資質の1つです。

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