史上初! 生まれながらの全盲者が映画監督になるドキュメンタリー『ナイトクルージング』が面白すぎる! 監督・佐々木誠インタビュー「他者とのイメージの共有…」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • コメント0

■映画を作ることは、健常者にケンカを売ること

――加藤さんが監督した『ゴーストヴィジョン』についてうかがいます。この映画はアクションSFで、全盲の主人公が目の見えるパートナーと手を組んで「ゴースト」という謎の存在を追う、というバディムービーですね。これはそのまま加藤さんと佐々木さんの関係性を表していると思ったのですが、アイデアはどちらが?

佐々木 「バディもので片方は目が見えない人」って言ったのは加藤くんだったと思います。映画の内容とそれを作ることそのものを、彼と僕、視覚障がい者と健常者との関係性のメタファーとして表現したのは狙ったところもありますが、制作を進めていくうちに、そこはあまり意識しなくなりました。

――『ナイトクルージング』には、健常者との関係のなかで、それまで加藤さんが悔しい思いや悲しい思いをたくさんしてきたことを匂わせるシーンがいくつかありました。「(健常者と)ケンカする時は相手の目を潰してからタコ殴りにする」とか「映画を作るのは挑戦、(健常者に)ケンカを売っているようなもの」といった発言とか。映画を作ることを決意した根底には、健常者への憤りがあるのでしょうか?

佐々木 たぶん、それが一番の理由じゃないでしょうか。怒ってるんですよ、彼は。『インナーヴィジョン』(2013年、視覚障がい者団体から依頼されて作った『ナイトクルージング』の前編的作品)を観たいろいろな人から、「加藤くんが映画を作る動機がわからない」って言われたのですが、おそらく、眼が見えない加藤くんの葛藤、障害を持つマイノリティの憤りが想像できないからだと思います。

――「映画を撮ったら面白い」って水を向けたのは佐々木さんですか?

佐々木 もちろん僕です。そこがそもそもの始まりで。ただ、普通の視覚障がい者なら「目が見えないから無理」って言うかもしれないのに、加藤くんは「やりたい」「やれるから」って言ったんですよ。目が見えない人でも映画を作れることの証明になるって。

――佐々木さんも「加藤くんならできると思った」って言ってましたもんね。映画の話をしていてお互いにイメージの共有ができたわけだし。

佐々木 まったく同じとは言わないにせよ、イメージの共有はできていました。映画の中にもあるけれど、ジャッキー・チェンが敵役の攻撃をどんなふうに避けていたか、というような細部は無理ですよ。そういうところがジャッキー映画の魅力だと思うかもしれないけれど、それは目が見える人の思い込みに過ぎなくて、逆に、細部を省いてもジャッキー映画は面白いことの発見だったりもするわけです。だからジャッキーはすごいし、吹き替えの石丸博也はすごいっていう話にもなる。

――それはつまり「映画はすごい」という話につながりますね。ところで、映画監督としての加藤さんを見ていて何か感じたことはありますか?

佐々木 向いていると思いました。

――どのあたりがでしょう?

佐々木 冷静で決断が速い。他人の話は聞くけれど、最終的な判断は自分で下す。あとは、体が大きくてサングラスをかけてるから、黒澤明に似ている。

――笑

佐々木 現場にデンと座っていると何か考えているように見えるんですよ。たたずまいが映画監督然としている。きっと、周囲の人間を信用して、そこに身を預けようっていう感じだったんじゃないでしょうか。だから周囲も加藤くんを信頼する。

コメントする

画像認証
※名前は空欄でもコメントできます。
※誹謗中傷、プライバシー侵害などの違法性の高いコメントは予告なしに削除・非表示にする場合がございます。