閉店前の銀座・軍国酒場「海軍倶楽部 宜候」に潜入! また1つ昭和が消えていった

 昭和43年5月27日(日本海海戦の日)に開店した『海軍倶楽部 宜候』(東京都中央区銀座)が、一昨年6月29日の営業を持って閉店した。近年、秘宝館やヌード劇場の閉鎖が相次いでいるが、これによって海軍倶楽部のような軍国酒場も大阪と鹿児島県に残されるのみとなってしまった。

 『海軍倶楽部』というだけあって、『宜候』の店内は、独特の雰囲気があった。実物の軍艦に使われていた部品を利用して士官室を再現しているだけではなく、店の入口には、ハッチがあった。モチーフとなっているのは、戦艦『三笠』だ。そのことから、「店内」と呼ぶことはなく、「艦内」と呼ばれていた。また、海軍士官第一種軍装、海軍士官第二種軍装など、誰でも着ることのできる衣裳が並べられていた。『宜候』にいるとタイムスリップしたような感覚になる。

「私が前のオーナーからこの店を引き継いだのは、今から17~8年前のことになります。本当はもう少し続けたかったのですが、店の契約更新ができなかったのですね。建物も老朽化していますし、私が年をとったというのもあります。本当に残念なのですが、ここで辞めるしかありませんでした。良い思い出はいっぱいあります。体の調子が悪いときには、お客さんが手伝ってくれたり、お土産やお花もいっぱいいただきました。私が4才のときに岡山で終戦を迎えたので、戦争の記憶はありません。父は海軍の少年兵で広島の呉にいましたが、外地に行くこともなく終戦を迎えました。雰囲気あるお店でしょ。もう少しやりたかったですね」(「艦長」の滝口尚子さん)

 ちなみに、宜候(ヨーソロ)というのは、宜しく候(よろしくそうろう)を略した言葉だ。航海用語のひとつで、定められた船の針路を正しく真っ直ぐ進めという意味がある。

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