トランスジェンダー選手の五輪参加がもたらす不利益と分断! 「困るのはトランス当事者」(東大教授)

 スポーツへの冒涜も深刻な問題でしょう。テストステロン値という表面的な一項目だけで男女を分けるのは、スポーツ実践の矮小化です。筋肉・骨格の違い、神経系統の違い、細胞内代謝の違い、月経の有無による練習量の違い等々、SRY遺伝子に起因するミクロからマクロに及ぶ全身の差異を無視して、ホルモン値という一点だけに男女差を還元する。そんな粗雑な人間観を押し付け「これで十分でしょ」とは、スポーツという文化も舐められたものです。

キャスター・セメンヤ/「Wikipedia」より

 ローレル・ハバードがクリアした「1リットルあたり10ナノモル未満」という基準も問題です。出生時から女子としてずっと生きてきた性分化疾患の女性陸上選手キャスター・セメンヤ(南アフリカ)に国際陸連(IAAF)が課した基準は「5ナノモル未満」。ハバードに許されたホルモン量はセメンヤの2倍です[4]。不公平きわまりないですね。

 ならば公平を期して、トランス女性にも「5ナノモル未満」を適用すれば問題解決でしょうか。いや、そもそもテストステロン値規制という、人為的身体改変の義務づけ自体は正しいのか。トランス選手がそんな規制をいつまでも受け入れたままでいられるか。

 スポーツの外、一般社会の流れを思い出しましょう。法的な性別変更を各国が制度化し始めたとき、その条件として、「性別適合手術」が必須でした。当時、ペニスを持ち射精できる女性、妊娠できる男性というのは「矛盾」だったのです。ところがその後、「手術を受けたくないトランスジェンダーが性別変更できないのは差別だ、断種手術の強制は非人道的だ」と言われるようになり、手術もホルモン治療もなしで性別を変えられるように法が整備されていきました。性自認が本当の性別であるというトランス支援の理念に従えば、あるがままの身体で性別移行が認められるのは当然です。

 この流れに照らすなら、「ホルモン剤で健康を害したくないトランスジェンダーがオリンピック出場を目指せないのは差別、ホルモンの強制は非人道的」という声が必ず出てくるでしょうし、出ないのはおかしい。しかも、オリンピックは、ドーピングには厳しい姿勢を貫いてきました。クスリでテストステロン値を抑えるなどという逆ドーピングが許されていいはずがありません。

画像は「getty images」より

 というわけで、テストステロン値規制はいずれ撤廃され、「女性であれば女子種目出場資格あり」に変わってゆくことが予想されます。

 一般に身体的領域で、女性と男性とで異なる資格基準を設けることは、差別ではなく区別だということに注意しましょう。とくにスポーツでは、伝統的に女子種目、男子種目と制度的に分けてきたのだから当然です。ところが、女性同士の間で資格基準の区別をつけるとなると、これは明確に差別となります。シス女性にはホルモン治療を求めないのにトランス女性には厳しいホルモンドーピングを課すという現在のIОC規定は、トランスジェンダーに対しきわめて差別的と言わざるをえません[5]

[4] https://twitter.com/Unity_MoT/status/1407697045897592834/photo/1

[5] 東京オリンピックの候補になっていたMtFが、テストステロン値規制をクリアできなかったために出場断念、という差別的事例は現に起きている。https://www.thegatewaypundit.com/2021/06/biological-male-barred-womens-400-meter-olympic-hurdle-due-high-testosterone-levels/

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