ナショジオも認定!呪われた世界遺産ワット・プラシーサンペット

「あれは、毎年3月に行われるアユタヤ世界遺産祭りでのことでした。その夜、ワット・プラシーサンペットはじめ遺跡群がライトアップされ、一帯は神秘的な光に包まれていました。音と光を駆使した歴史劇に代表されるいくつかのショーが無事終演を迎え、お客さんの姿も見えなくなり、我々は祭りのあとに漂う独特の静けさを感じながら、撤収作業をしていました。夜中12時に近づいた頃でしょうか。
 風に乗って楽器の調べが聞こえてきました。その音はうまく説明できないのですが、何かこの世のものではない、そんな音色に感じられたのです。おそるおそる音が聞こえる方に目を向けると、そこにはワット・プラシーサンペットの仏塔が妖しげに輝いていました」(世界遺産祭りスタッフ談)

 怪談話がつきないワット・プラシーサンペットであるが、その魔力はときに外国人観光客にふりかかる。遺跡で観光客相手のカメラマンをしていたコンポットさんは語る。

「その日、私はいつものように、ワット・プラシーサンペット付近で観光客に声をかけていました。すると、知り合いのガイドが白人観光客とちょっとした口論になっているのを見かけたんです。あとでそのガイドに何があったのか聞くと、そのフランス人が遺跡内で拾ったレンガ片を記念に持ち帰ろうとしたので、止めたらしいんですね。しかしそのフランス人は彼の言葉を聞かずその石片を持ち去ってしまった。それからおよそ1ヶ月がたったころ、そのガイドが私を見つけて話しかけてきました。彼は小さいレンガ片を私に見せたあとで、こんな話をしてくれたんです。
『お前、1ヶ月前のフランス人の話覚えてるだろ? これ、フランスからわざわざ俺宛で、遺跡事務所に送られてきたんだぜ。なんでも、奴はこのレンガ片を記念に持ち帰って以来、事故にあったり身内に不幸があったり散々だったらしいんだ。で、このレンガ片が災いのもとだと考えたらしいんだな。だから今日俺が奴の代わりにここに返しにきたってわけさ』
ちょっと信じられない話と思われるかもしれませんが、遺跡事務所に持ち帰られたレンガ片が送り返されてくるという話、実はそんなに珍しいことじゃないんですよ」

 アユタヤの遺跡内には何百年経過してもなおそこに残るレンガ片が随所に転がっている。風化した独特の色合いが余計に、見る人の心にロマンを掻き立てるのだろう。その思いを心に留めようと、記念品として現地のものを持ち去る人もあとを立たない。しかし、軽い気持ちでとったその行動が、後々深い後悔を残す場合もある。

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