ナショジオも認定!呪われた世界遺産ワット・プラシーサンペット

最後にタイの情報共有サイト「pantip」に寄せられた、体験談を紹介したい。

 これは私が小学6年生だった時の話です。遠足先はアユタヤでした。ガイドに連れられて、どの遺跡をどう回ったか、もはや記憶にないのですが、最後に向かった遺跡がワット・プラシーサンペットだったことは覚えています。

 広い遺跡の中をガイドの説明を聞きながら歩き、石仏座像が並ぶ一帯まで来たときでした。ガイドさんは私たちを脅かすような声でこう言いました。「ここらへんのものを勝手に手にとらないように、何が起こっても知りませんよ」――しかしイタズラ好きだった私は、崩れ落ちた石仏の膝頭のあたりに落ちていた石片を拾い上げ、友達に見せびらかしたんです。「見ろよ、取っても別に何も起こりゃしないって」ふざける私を怯えたように見る級友たちの顔が、私には馬鹿らしいとさえ思えたのでした。

 全ての行程を終えた私たちはバスで帰路につきました。学校に到着する直前、ズボンのポケットの中にさっきの石片を入れっぱなしにしていることに気がつきました。「あ、しまった」とは思ったのですが、家に持ち帰りたくはなかったので、そのままバスの窓のふちに置いてきてしまったのです。
 その夜のことです。眠りについていた私の耳に突如激痛が襲いかかりました。飛び起きて耳を押さえ汗を滴らせながら痛みに耐えていたのですが、最後にはその痛みで再び気を失ってしまったのです。
 気がつくと、誰かから逃げている夢の中にいました。目の前に現れたお堂に咄嗟に飛び込んだ私を、黒光りする肌を持つ屈強な男が追ってきています。「そうだ、自分はアイツに追われていたのだ」と夢の中で理解しました。その男の手にはしっかりと大きな刀が握られており、殺気を全身から発していました。

 しかし、どうもその男はお堂の中には入って来れないようでした。御堂の中で振り返るとそこには、アユタヤで最も誉れ高い大仏様“プラモンコンボピット”が鎮座しておられました。夢の中で、必死に仏様に助けを求めました。しかし、私の耳にはお堂の外の男から「警告したのにお前が聞かなかったからだ」という呪詛のような声が絶え間なく響いているのです。

 そして激痛で目を覚ましました。痛みはさっきよりひどくなっています。痛みの中、男の声を思い出さざるを得ませんでした。

 「警告したのにお前が聞かなかったからだ……」一体どういう意味なんだろう、と思ったその瞬間、ガイドの注意を無視して遺跡から持ち出した石片が頭に浮かびました。痛みの中、涙を流しながら、夢で私を追いかけた男の顔を思い出し、心の底から許しを乞いました。同時に夢に出てきた大仏様にも手を合わせておすがりしました。

 どれぐらいそうしていたでしょうか。耳の痛みはだんだんと和らぎ、いつしか眠っていました。それからは何も変わったことは起きていません。しかし、あの日の出来事を私は一生忘れることはないでしょう」。

 数々の怪現象が報告されるワット・プラシーサンペット――その美しさは一見に値する。タイにお越しの際は、ぜひ足を延ばし観光して頂きたい。石片の持ち出しは、呪われるだけでなく違法行為でもあるので、くれぐれもなされることのないように。

 このように、数々の怪現象が報告されているワット・プラシーサンペットであるが、その美しさは一見に値するものだ。みなさんもタイにお越しの際は、ぜひ足を延ばして見られてはいかがだろうか。石片の持ち出しは、呪われるだけでなく違法行為でもあるので、くれぐれも、そのようなことは為されませんように。


文=バンナー星人

2004年よりタイ在住。バンコクの公立学校にてタイの高校生に日本語を教える傍ら、2017年に、高野山大学院通信課程密教学修士号取得。仏教とオカルトが織りなすアメイジングなタイの魅力にとりつかれている。

Twitter : @berialshunnya

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