「売れたいんじゃない、目立ちたいんだ」“神奈川県央No.1ロックボーカリスト”DEATHRO! 独自進化が止まらない理由(インタビュー)

【DEATHROインタビュー 前編はこちら】

写真 / 小野由希子
ワンマンGIG「Crymax After Holy Night」12月26日


 “神奈川県央No.1ロックボーカリスト”の異名を持つ男、DEATHRO(デスロ)。「県央」とは厚木、海老名、綾瀬、大和、座間、相模原の一部を含むエリアであり、同じ神奈川でも横浜、横須賀、川崎、湘南などのベイサイドではない、本人いわく「イナタいほうの神奈川」である。そんな郊外に拠点を置き続けるDEATHROは、ANGEL O.D.~COSMIC NEUROSEのボーカリストとして約15年にわたりパンク/ハードコア・シーンで活動したのち、2016年3月にソロデビュー。自らのルーツである氷室京介やBOØWY、およびその系譜にあるJ-ROCKサウンドを更新し、数々のモダン・ビートロック・アンセムを生み出してきた。

 世界がCOVID-19パンデミックに見舞われて以降もDEATHROは歩みを止めることなく、2021年6月には4人編成だったバンドを6人編成の「D6」へとアップデートし、10月には自身初の再録ベストアルバム『up”d”ates』をリリースするなど独自進化を遂げている。TOCANAでは来たる12月26日にワンマンGIG「Crymax After Holy Night」を控えるDEATHROにインタビューを実施。特にリリースもないそうなので、たっぷりと雑談してきた。

 

■氷室京介でいうと『Memories Of Blue』にあたるアルバム

──インタビュー前編で「これがDEATHROの音楽だ!」と言える曲を作りたいとおっしゃっていましたが、現時点での代表曲を1曲選ぶとすれば、やはりデビュー曲「BE MYSELF」になるんですかね?

DEATHRO そうですね。それは『up”d”ates』(2021年10月リリースの「D6」による再録ベストアルバム)を出す前にやった収録曲予想の投票結果にも表れていますし、自分としても、なんだかんだ言って最初にパッとできたものなので、まずこれがやりたかったんだろうなと。今後はいかにしてそこから脱するかじゃないですけど、「SLEEPLESS」とか「STARDUST MELODY」も無理やり浸透させてきたし、まだまだここからですね。次のアルバムが4枚目になるので、氷室京介でいうとちょうど『Memories Of Blue』という、「KISS ME」が入っているアルバムなんですよ。

──ごめんなさい。僕は氷室京介をまったく通っていなくて。

DEATHRO BOØWYでいうと『JUST A HERO』という、リリースツアーのファイナルで初めて武道館公演をやったときのアルバムで。

──BUCK-TICKでいうと?

DEATHRO 『悪の華』ですね。でもBUCK-TICKは5枚目の『狂った太陽』がターニングポイントになったアルバムなんですよ。いずれにせよ、僕の好きなアーティストやバンドって、1stアルバムが名盤という感じではないことがけっこう多い気がしていて。

──そっちのほうがリスナーとしては楽しいですよね。「1stが最高傑作」とか言われることが多いと思いますけど。

DEATHRO The Clashの『London Calling』も3枚目ですよね。僕は1stの『白い暴動』と2ndの『動乱』……って邦題で覚えちゃってるんですけど、最初の2枚はあんまり聴いていなくて。でも最近、改めて聴き返してみたら3rdに至るまでの変化が見えたりして面白かったですね。4thの『Sandinista!』はLP3枚組なので「Police on My Back」だけ聴ければいいかなという感じになっちゃうんですけど、次作の、オリジナルメンバーでの最後のアルバム『Combat Rock』は普通に1枚で。半分くらいダブの曲だったりするんですけど、なんだかんだで好きです。

──僕はいわゆる初期パンクだとロンドンじゃなくてニューヨークのほうが好きなんですけど、例えばRamonesは1stや2ndではなく6thアルバムの『Pleasant Dreams』を一番たくさん聴いたかもしれません。

DEATHRO リリースを重ねたぶんだけ、人によって好きなアルバムがバラけたりしますよね。だから僕も作品を出し続けたい。GOFISHことテライショウタさんと「2年に1枚は出す」と約束したこともあるので、最低でもそのぐらいのペースで。その中でどれが名盤的な位置付けになるかは、あくまで受け手次第。僕はシングルであれアルバムであれ、リリースした時点で自分のものではなくなるという感覚があるんですよね。まさに“リリース”で、自分の手を離れて誰かの手に渡ったら、その人が受け取ったものがすべてなので。それに対してあとから言い訳したり、インタビューとかで「こういうつもりで作りました」と話したりするのは本当は好きじゃないんです。

──たしかに、DEATHROさんはそういう話よりも古淵のイオンモールの話とかをしがちですよね。

DEATHRO 自分が制作意図とかを語ってしまうと、聴く人がそれに囚われちゃうじゃないですか。そうじゃなくて、聴いた人がどんな解釈をしようと正解だし、逆に俺がその解釈をいただいちゃうこともあったりして。だから曲解説とかライナーノーツも自分ではやりたくなくて……いや、正直に言うと『up”d”ates』に関してはライナーを付けようか迷ったんです。なぜかというと、氷室京介の最初のベスト盤『SINGLES』で1曲につき1ページずつ、曲ごとのストーリーみたいなものが書いてあったから。

──先ほど「リリースした時点で自分のものではなくなる」とおっしゃいましたが、例えば「あのアルバムはもっとこうしておけばよかった」みたいな気持ちは?

DEATHRO いっぱいありますよ。いっぱいあるから『up”d”ates』で再録したというのもあるんですけど、でも聴き比べてみると、やっぱり各曲の本来の姿はオリジナルバージョンのほうなんですよ。だから『up”d”ates』は完成版ではなくて、あくまで「こういうパターンもありますよ」というバージョン違いの掲示ですね。それを作ったときのフレッシュさというのは、オリジナルの音源にしかないので。

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