ムー大陸の古代遺跡で原子力設備が稼働中!? 封印された「いわくつきアニメ」の戦慄内容
――絶滅映像作品の収集に命を懸ける男が、ツッコミどころ満載の封印映画をメッタ斬り!
『海底大戦争 愛の20,000マイル』
1981年・タツノコプロ監督/九里一平
脚本/佐々木守
声/井上純一、北村優子、黒沢良ほか
今回は、一流のスタッフで制作されながらも、80年代に発売されたVHSビデオを最後になぜかディスク化せず、世間から忘れ去られているレアなテレビ用長編アニメ映画を取り上げます。
「SFの父」と呼ばれたフランスの小説家、ジュール・ヴェルヌ(1828~1905年)。『地底旅行』(1864年)、『八十日間世界一周』(1873年)、『神秘の島』(1875年)、『十五少年漂流記』(1888年)……子供の頃に目を輝かせながらジュブナイル小説を読んだ方も多いと思いますが、中でも『海底二万里』(1870年)は、最初にユニバーサルが『海底六万哩』(1916年)として映画化し、ディズニーが1954年(日本公開55年)に制作した『海底二万マイル』はアカデミー視覚効果賞を受賞、現在でも高い評価を得ています。テレビの洋画劇場で初めて観た時、かっこいいデザインの潜水艦ノーチラス号や、名優カーク・ダグラス扮する船員達とアナログ技術で触手がクネクネ動き回る怪物クラーケン(ダイオウイカ)の死闘には興奮させられたものです。
ちなみに、東京ディズニーシーの「ミステリアスアイランド」で劇中と同じノーチラス号を見る事ができます。テーマポート名はノーチラス号が再登場する『神秘の島』(英題『MYSTERIOUS ISLAND』)にちなんだもので、ネモ艦長が築いた秘密基地という設定です。『神秘の島』も『SF巨大生物の島』(61年)として映画化されていまして、人形アニメーションの神様レイ・ハリーハウゼンによる巨大なカニやミツバチの超絶な特撮が楽しめる作品です。『海底二万マイル』と併せてDVD鑑賞してから「ミステリアスアイランド」に訪れたら、アトラクションが一層楽しめる事でしょう。
さて『海底二万里』は単なる映画化に限らず、「原案」としてノーチラス号やネモ艦長を登場させた翻案作品もいくつか生まれました。もっとも『海底二万マイル』も翻案と言えば翻案ですが、設定をやりたい放題アレンジした有名なアニメといえば、総監督・庵野秀明、監督・樋口真嗣、音楽・鷺巣詩郎というエヴァア・トリオによる『ふしぎの海のナディア』(90~91年、NHK)です。さすがの庵野作品、今でも根強い人気を持つ傑作アニメですが、実はもう1作、その10年前に『海底二万里』を下敷きに大胆なアレンジを試みたアニメ映画が制作されていたのです。
■いわくつき作品『海底大戦争 愛の20,000マイル』の内容
『海底大戦争 愛の20,000マイル』は、1981年の日本テレビ正月用スペシャルアニメで、1月3日の夕方16時から1時間半枠で放送されました。詳細は知りませんが、諸事情で1979年の完成から放送まで2年近くもかかるという、いわく付きの作品でもありました。ガビア帝国の独裁者ダリウス皇帝が、軍事力で地球を支配しようとする未来の話です。
潜水艇バチスカーフ号で海底遺跡を研究していた若者リッキーは、謎の原子力潜水艦ノーチラス号の艦長と出会い、沈んだムー大陸の古代遺跡で現在も稼働している原子力設備を発見します。実はネモ艦長、元はガビア帝国で兵器や水生人間などを開発していた科学者で、妻をダリウスに殺され行方をくらませていたのです。ネモは妻の仇を討ち、娘ソフィアをリッキーに託し、ノーチラス号と共に海底に沈んでいくのでした。
交易が盛んな異国情緒豊かな港町・フランス西部ナントで生まれ育ったヴェルヌは、船乗り達の冒険談を聞いて海の英雄になる未来を夢見ました。こうした生い立ちから『海底二万里』が生まれ、主人公リッキーが住む町もナントを彷彿とさせる雰囲気に描かれています。またナポレオン3世に批判的だった平和主義者のヴェルヌは、被圧迫民族解放を擁護していました。虐げられた民族出身という設定のネモ船長もそこから生まれ、劇中でも独裁者に挑戦します。
制作は『科学忍者隊ガッチャマン』や『タイムボカン』シリーズのタツノコプロ。監督と絵コンテは一族経営吉田家の三男・九里一平(本名・吉田豊治)で、後のタツノコプロ3代目社長です。演出はタツノコプロのエース・真下耕一で、劇中の戦闘シーンや爆発シーンはまさに『ガッチャマン』。脚本は、アニメ・特撮、一般ドラマ・劇場作品から漫画原作まで、代表作を挙げたらキリがないレジェンド名ライターの佐々木守。
メカニックデザインは当時タツノコプロに在籍していた大河原邦男! 『機動戦士ガンダム』のモビルスーツ・デザイナーとしても有名な大御所です。キャラクターデザインは『うる星やつら』『魔法の天使 クリィミーマミ』『機動警察パトレイバー』などで人気の高田明美。ヒロイン・ソフィアの子供時代が何となくマミです(笑)。
音楽はジャズメンでもある鈴木宏昌。手塚治虫作品『海のトリトン』では、魂の震える主題歌『GO!GO!トリトン』を作曲した方でもあります(聴いた事ない人は死ぬ前に聴くべし!)。こんな感じで当世トップクラスのクリエーターが結集した作品なのに、冒頭で述べたようにディスク化されていないのです。アニメ史の陰に埋もれてしまうのは惜しい作品として取り上げてみました。
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