“何もかも止まった”村に迷い込んだ3人は…! 強烈な違和感と静寂、任務中の兵士が体験した本物のタイムスリップ

 初めて訪れた場所で、どことなく「何かが違う」と感じたことはないだろうか。ひょっとするとそれは、束の間のタイムスリップ体験だったのかもしれない。かつてイギリスで実に不思議な“小さな旅”の物語が報告されているのだ。

■“時間が止まった”美しい村

 タイムマシンに乗って過去や未来に行くという大げさな話ではなく、何かのきっかけでほんの少しの間のタイムスリップする体験は、実は意外なほど身近で頻繁に起こっているものかもしれない。かつてイギリスで興味深い体験談が残されている。

 1957年10月、イギリス海軍の士官候補生たちがサフォークの田舎で、簡単な軍事訓練を行っていた。この日、ウィリアム・ラング、マイケル・クロウリー、レイ・ベイカーの3人の士官候補生は、景勝地を通るルートを移動しながら、割り当てられたいくつかの場所を観察して記録し、軍事行動に役立つ詳細な地図を作ることが課せられていた。

 すっきりと晴れた秋の空に恵まれた日だったこともあり、まるで絵画のように美しい田園地帯を歩くことは、訓練ではあっても気分が高揚してくる楽しいものであった。ハイキング気分で小さな旅に乗り出した3人であったが、物事は奇妙な展開を見せはじめる。

 ルート上には、趣のある路地と中世の歴史的建物が残っていることで知られる住民わずか数百人の小さな村、カージーの集落があった。

 カージー村を見渡すところまで来た一行は、美しい光景にしばし足を止めて魅了された。おそらく普段通りの静かな一日で、教会の鐘が鳴り響き、愛らしい鳥のさえずりが奏でられ、煙突からは煙が上がっていた。村は観察ポイントの1つであったので、彼らはもっと村へと近づいていった。

 ある地点まで近づくと、遠くから見ていたのとは“何かが違う”ように思えてきた3人はキツネにつままれたような気分を味わうことになる。足を踏み入れた村は、完全な沈黙に包まれていたのだ。

 教会の鐘は鳴り止み、鳥は歌うのをやめ、そよ風すらない無風の状態であった。すべてが静止しているように見え、路上の落ち葉はピクリとも動かず、木の枝も揺れることなく、近くの小川にいるアヒルでさえ身じろぎもせずにずっと同じ位置にいた。まるで時間が止まってしまったようであった。

 さらに奇妙なことに、天気に恵まれた昼下がりであるというのに村民の姿が1人もなかった。さっきまでもくもくと煙を放っていた煙突も、今はまったく煙はない。村は文字通り“ゴーストタウン”の様相を呈していた。

 腑に落ちない思いを抱きながら一行は村を探索したのだが、人どころか車さえ1台もなく、電話線も自転車もなかった。道はすべて石畳で、近代的な建物がまったく見えない。手作りの木造建築の緑がかったガラス窓は汚れの膜で覆われていた。

 時間が止まって見えることに加えて、季節さえ変わったように見えた。秋であるにもかかわらず、木々は春や初夏に見られるような旺盛な緑色の葉を茂らせていた。この村にいったい何が起こっているのか?

■1400年代初頭への“タイムスリップ”だったのか?

 なおも村を歩き回っていた3人は、中に誰もいそうにない1つの建物を近くから検分してみることにした。

 窓から中を覗いてみると、どうやら村の精肉店であることが理解できた。テーブルやカウンターはなく、皮を剥がれた2、3頭の牛の死骸があった。肉塊のところどころがカビで緑色に変色しており、明らかに食肉処理が途中で放棄された状態であった。1957年の保健当局がそのような非衛生状態を店に許可するはずもない。

 ほかにもいくつかの建物を調べたのだが、いずれも人の気配は一切感じられなかった。

 そして一行は、この村の象徴である教会塔を探すことにした。来る前に遠くからははっきりと見えていた教会塔あったが、驚いたことに村中どこに行っても塔を発見することはできなかった。いつの間にか教会塔がなくなっていたのである。

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