「遺伝子窃盗」が横行する時代が迫っている! ディストピアすぎる近未来の新型犯罪を解説

 パルムッター氏とカナダ・トロントの大富豪ビジネスマン、ハロルド・ピーレンブーム氏とはいくつかの問題で長らく係争中なのだが、ピーレンブーム氏側の弁護士が、嫌がらせの手紙の封筒の唾液から抽出されたDNAと比較するためにパルムッター氏とその妻のDNAを密かに収集したといわれている。

 この弁護士との話し合いにおいて、パルムッター夫妻にはペットボトルの飲み物が提供されており、口をつけたこのペットボトルを回収してDNAが採取されたというのである。もし裁判になった場合、DNAの窃盗にどのような裁きが下るのか興味深い限りだ。

「遺伝子窃盗」が横行する時代が迫っている! ディストピアすぎる近未来の新型犯罪を解説の画像4
「The Conversation」の記事より

 ヴェルティンスキー准教授は現在、どの州でもこうした問題には十分に取り組んでおらず、遺伝的プライバシーを保護するために特別に設計された法律がある州でさえ、規制は狭い範囲の遺伝的利益のみを対象にしているという。たとえば一部の法律では、遺伝情報の開示は禁止されているが、収集は禁止されていないのだ。つまり、DNAの窃盗が罪にならない可能性もあることになる。

 もちろん、「遺伝子パパラッチ」の問題は有名人に限った危機ではなく、一般市民の間でも「遺伝子ストーカー」や「遺伝子盗難」が横行する未来も考えられる。今後、遺伝的プライバシーと遺伝学に関する個人の権利について、より広範な議論を招くことになることは間違いない。

参考:「The Conversation」、ほか

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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