自分が死んでいると誤認する「コタール症候群」とは? 脳がなくなったと主張する男

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 今ここにいる自分には実体がなく、肉体はもぬけの殻であると認識している人々がいる。自分は歩く死体であると確信している「コタール症候群」の人々だ。

■自分がゾンビだと思い込む「コタール症候群」とは?

 ある精神科医は「コタール症候群(Cotard syndrome)」を“裏返しの誇大妄想”と定義している。 この病気は自己をマニアックに誹謗中傷し、患者は自分が死んでいて、身体は腐敗しているゾンビであると信じ、自分が犯罪者であり殺人者であるとさえ感じているという。

自分が死んでいると誤認する「コタール症候群」とは? 脳がなくなったと主張する男の画像1
画像は「Getty Images」より

 科学用語ではコタール症候群は、虚無主義的で心気症の抑うつ妄想と、誇大妄想が組み合わさったものとして定義される。患者は自分がウォーキング・デッド、大犯罪者、各種の「暗黒大王」になったと信じているのだ。

 コタール症候群に苦しむ人々は、不条理な点まで自分自身を中傷することを特徴とし、その程度は誇大妄想に匹敵する。たとえばある人は、自分が吐いた毒の息で全世界が汚染されたり、全世界の人々をAIDS に感染させたと主張するかもしれない。多くの場合、患者は自分が死んでいて、自分の存在は幻想であり、肉体はもぬけの殻であると考えている。

 コタール症候群は「妄想的否定(delusional denial)」とも呼ばれ、1880年にフランスの神経学者ジュール・コタールによって説明された。患者は自分の肉体には脳も心臓も肺もないと主張するかもしれず、また知性、良心、知識が完全に欠如していると感じ、地球は空っぽであり、自分を含めて生きている人々には魂がなく、その肉体はもぬけの殻でしかないと訴えるのである。

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ジュール・コタール 画像は「Wikipedia」より

 これまでの説明でコタール症候群の人々がクールで機智に富んだ冷静な観察者のように思えるかもしれないが、当人は苦しみに苛まれていて、軽度のうつであるとも考えられている。コタール症候群がどれほど特殊であるのか、あるいは逆にかなり一般的な症状であるのかについてはまだよくわかっていない。

 自分は死んでいるという病理学的な信念のために、患者は自分の体である「もぬけの殻」を取り除くために自殺を試みることもある。また「ウォーキング・デッド」であることをやめるために絶食して栄養失調で死に到るケースもあるという。

■脳活動の低下が原因なのか?

 2013年の科学誌「New Scientist」に、コタール症候群の患者の興味深いケースが紹介されている。自分には脳がないと感じていた患者の主張は、実はある程度は事実であったというのだ。

 グラハムという名前の男性患者は10年前、ある朝に目が覚めたとき、遂に自分は死んだのだと感じた。それまでの長い期間、グラハムは重度のうつ病に苦しんでいて、水を張ったお風呂に電化製品を投げ込んで自殺を図ったこともあった。

 その朝、グラハムは自殺未遂中に自分の脳が死んでなくなってしまったと認識し、入院した時には脳がないため、薬剤は役に立たないと医師に訴えた。医師はそんなはずはないのだと逆に彼を説得しようとしたが、グラハムはまったく聞く耳を持たなかった。

 グラハムは嗅覚を失ったと話し、身内を含めて他者には誰一人として会いたくないと訴え、以前は大好きだった愛車でのドライブにもまったく興味を失った。またそれまでは愛煙家であった彼はタバコを吸うこともなくなったのだ。

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