南米アマゾンのヒト型UMA「マピングアリ」は実在するのか!? 4千年前の巨大ナマケモノとの共通点も

 ブラジルの民間伝承に登場するジャングルに住む謎の人型UMA(※)「マピングアリ」の正体や如何に? 一説では絶滅を逃れた大型のナマケモノだともいわれているのだが――。

(※) UMA(ユーマ、Unindentified Mysterious Animal)とは未確認生物を意味する和製英語。未確認生物とは何世紀にもわたって語り継がれてきた物語や伝説に登場したり、また、今日でも目撃例があるが実在が確認されていない生物のことだとされている。物語、伝説、噂話などで語られる生物であるため、科学的な対象ではなく、“オカルト”に分類される。英語圏で、未確認生物はCryptid (クリプティッド)と呼ばれ、これを研究する学問はCryptozoology(クリプトズーロジー、暗号生物学)と呼ばれるのが一般的。

「マピングアリ」はナマケモノなのか?

 大自然の宝庫、アマゾンのジャングルにはさまざまな野生生物が生息しているが、地元の民間伝承ではマピングアリ(Mapinguari)と呼ばれるUMA(未確認生物)が語り伝えられている。

 クマの一種やビッグフットのような獣人であるともいわれているマピングアリだが、伝えられている外観の描写では大きな人間ほどの体格で、顔には大きな目が1つあり、巨大な口が腹部の真ん中にあり、足のつま先は後ろを向いており、毛足の長い赤味かがかった毛皮で覆われている。耳をつんざくほどの大音量で吠え、運悪く吸い込んだ者を発狂させてしまうほどのひどい悪臭を周囲に放っているという。

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画像は「Wikipedia」より

 マピングアリはジャングルに分け入ったハンター、木こり、キャンパーなどの無礼な人々から自然を守る精霊であるとも言われているが、20世紀後半に入ってからはマピングアリがビッグフット(※)型のUMAであるというおおよそのイメージが形成された。

※ ビッグフットとは森の中を歩き回る大きくて毛むくじゃらの大型類人猿のような未確認生物。一般的に身長2~3m、体重200~350kgの巨体で怪力、直立二足歩行をしているとされ、カナダやアメリカの民間伝承では「サスカッチ」とも呼ばれる。その姿は大型化したゴリラやチンパンジーのようにも見える。これによく似た未確認生物にヒマラヤの「イエティ」、オーストラリアの「ヨウィー」、そしてシベリアの「チュチュニア」などが報告されているが、それぞれの関係性は不明。

 足が逆向きになっている身体的特徴は民間伝承ではよく見られるという。このような生き物は足跡が反対方向に進むように見えるため、追跡しようとする人々を混乱させる。これらは世界中の文化の民間伝承に見られ、南アメリカではほかにもいくつかのケースがあるという。

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画像は「YouTube」より

 民間伝承におけるマピングアリは精霊であったり、神に罰せられ異形の姿にされたシャーマンであったりするのだが、現代になると未発見の生物種である可能性や、絶滅を回避し生き延びている古代の生物種であるという仮説などが登場するようになった。

 アメリカの鳥類学者、デビッド・C・オーレン博士は1977年に研究員としてブラジルに行った際に現地でマピングアリの話を聞き、数千年も前に絶滅したと信じられている巨大な地上ナマケモノ(ground sloths)ではないかという仮説を立てて1933年に論文を発表した。

“ナマケモノ説”は当時の科学者からの批判にさらされたが、オーレン博士が発表した論文は主要新聞に取り上げられ話題になっている。

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地上ナマケモノ 画像は「Wikipedia」より

 オーレン博士が説明するマピングアリと地上ナマケモノの共通点は以下の通りだ。

●赤みがかった毛皮:ミイラ化したナマケモノの遺体から採取された毛皮のサンプルの多くは赤みを帯びており、一部の報告ではマピングアリも同様である。

●逆向きの足:地上ナマケモノのつま先は歩くときに内側に曲がっていた。これはマピングアリの逆向きの足を説明できる可能性がある。

●腹部以外の剛健性:オーレン博士はナマケモノのごく少数の種が、ナマケモノの親戚であるアルマジロのような動物に装甲板を与える皮膚組織を持っていると説明し、骨のない腹部を除いてきわめて丈夫にできており、マピングアリに共通する身体的特徴であると言及した。

●顔つき:オーレン博士はナマケモノの顔はサルにはまったく似ていないことから、同じくサルには似ていない隻眼のマピングアリの顔と共通点がある可能性を指摘している。

●人間と同じサイズ:地上ナマケモノは確かに人間と同じくらいのボディサイズであり、マピングアリと共通している。

●足跡:マピングアリの足跡についての伝承の中には足跡のほかに地面に押し込まれた瓶の底のような窪みがあったとあり、オーレン博士は地上ナマケモノの尻尾の跡がこれに相当するのではないかと指摘している。

●糞便:特定の洞窟に腐糞石として大量に残っている地上ナマケモノの糞は馬の糞にそっくりであり、これもマピングアリの糞便の特徴に似ている。

●発声:地上ナマケモノの発声は、赤ん坊の泣き声のように聞こえる現在のナマケモノにほぼ同様であるとされ、マピングアリのレポートと一致する。

地上ナマケモノの4000年前以降の化石は見つかっていない

 ちなみに“一つ目”と並んでマピングアリの最大の特徴とも言える腹部の口についてはオーレン博士は何も言及していないという。

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画像は「YouTube」より

 その出自は民間伝承であるマピングアリだが、このような地上ナマケモノとの共通点をどう考えればよいのだろうか。

「マピングアリの伝説がアマゾンの森に生息するミロドン亜科の地上ナマケモノと人間の接触に基づいていることは、私の心にはほとんど疑いの余地がありません」とオーレン博士は結論づけている。つまり“ナマケモノ説”は真実であるというのだ。

 オーレン博士の論文は「ロサンゼルス・タイムズ」などの大手新聞に取り上げられ、当時の少なくない科学者らは大きくなりすぎて絶滅した巨大な地上ナマケモノがアマゾンでまだ生き残っていると考えるようになったという。

 地上ナマケモノは数百万年前に南アメリカで最初に進化し、そこから大陸を通して北へと広がっていった。最近の氷河期の頃までに、多くの種がアメリカ大陸全体に定着し、最大のものは現代のゾウよりも大きくなっている。

 氷河期の極大期は人類が初めて北米に進出するほど海面が低くなった時期であり、この出来事によって地上ナマケモノは史上初めて人間という捕食者に狩られ、また環境変化が地上ナマケモノの種としての存続を不可能なものにした。

 1万年前までに北米の地上ナマケモノのほとんどは消滅したが、南アメリカの地上ナマケモノは人類の進出もまだそれほど進んでいなかったためさらに数千年長く続いた。化石の炭素年代測定によると、カリブ海の島々では4000年前まで巨大な地上ナマケモノが生息していた。

 しかし逆に言えばそれ以上新しい地上ナマケモノの化石はこれまで発見されておらず、この点でアマゾンのマピングアリが地上ナマケモノであると断言するのは難しい。

 バク、ジャガー、さらにはマナティーなど、生き残った種は化石の記録に残っており、それよりのはるかに大きな動物が化石記録を回避するだけでなく、その存在に関するいかなる証拠も残さないということは普通に考えてあり得ないことである。

 とすればマピングアリはやはり未知のUMAということになるだろうか。ジャングルに潜む“モンスター”の逸話は世界中に存在しているのも事実だ。

 ビッグフット、ネス湖のネッシー、モンゴルのデスワームと同様、マピングアリがブラジルの民間伝承の“キャスト”以外の何かであると結論付けるじゅうぶんな証拠はない。新たな事実や物証があらわれるまで、ひとまずマピングアリの謎は続いていくことになりそうだ。

参考:「Skeptoid」ほか

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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