隕石衝突から地球を救う確実なアイデアは無い! 核攻撃とDARTどちらが有効なのか…?

【概要】

 NASA(アメリカ航空宇宙局)の試算によれば、衝突すれば世界の名だたる都市を“更地”にできる直径300メートル級の小惑星は、約7万年に1回、地球に衝突することが導き出されている。しかし小惑星の衝突から地球を守る確実な手段はまだ無い。有力候補に挙げられている核攻撃による爆破は、タイミングを誤るとさらなる惨事を招く可能性がある。また無人探査機を小惑星に衝突させて軌道を変えるDARTもNASAなどが模索しているが、核攻撃の方が有効との指摘もある。

【詳細】

 将来的に脅威となるものを早い段階で木っ端微塵に破壊できればまずは一安心ということになるが、バラバラになったはずの破片が密集してひと塊になり再度襲ってくるとすればたまったものではない。この悪夢は地球に衝突しそうな小惑星の破壊シナリオで起こり得るという――。

危険な小惑星は引きつけてから撃つべき!?

 NASAの試算によれば、衝突すれば世界の名だたる都市を“更地”にできる直径300メートル級の小惑星は、約7万年に1回、地球に衝突することが導き出されている。さらに地球上の生命の多くを滅ぼす可能性がある直径800メートル級の岩石は70万年ごとに地球に衝突しているという。

 さしあたっての懸案事項は7万年に1度の小惑星の地球衝突がどのタイミングで起こるのかである。

 今のところはそれがいつかなのかはわからないものの、必ずその日が来る壊滅的な小惑星衝突イベントを予期して、科学者たちは地球に向かって飛来する宇宙の岩石をいち早く検出し、破壊したり進路を逸らしたりする対策の考案に躍起になっている。

 最善の解決策はやはり核攻撃を伴う措置だ。1998年の映画『アルマゲドン』では、ブルース・ウィリス演じる石油掘削員から転身した宇宙飛行士が小惑星に核爆弾を仕込んで爆発させて2つに割り、大気圏突入直前で軌道を変えさせて地球への衝突が回避された。

 いずれにせよ核兵器を使用して小惑星を粉砕したり衝撃を与えて軌道を変えさせることが想定されているわけだが、その際に留意しなければならないことがあるという。

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「Daily Beast」の記事より

 先頃「arXiv」に掲載されたハンガリーのコンコリー天文台をはじめとする合同研究チームの論文よれば、地球に向かってくる小惑星や岩石をどのタイミングで攻撃するのかが重要であるという。

 研究チームによると、最大かつ最も危険な小惑星の場合は、なるべく引きつけた状態で攻撃することが重要であるということだ。具体的には予測される衝突のせいぜい数年前まで待ってから破壊することが肝要であるという。見つけたからといってすぐに破壊してはならないというのだ。

 彼らの計算では、危険な小惑星が太陽系を通る経路と、太陽、地球、近隣の惑星からの重力の影響が考慮されている。計算は複雑なのだが結論は単純だ。宇宙の岩石をあまりに早い段階で粉砕すると、砕けた小さな岩々はゆっくりと求心力を取戻して塊になって再び地球を目指し、まるで散弾銃の銃撃のようにいくつもの岩石が広範囲にわたって地球に直撃する可能性があるというのだ。したがって危険な小惑星を見つけたからといってすぐに破壊しないほうがよいということだ。

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画像は「Pixabay」より

結局は“アルマゲドン”なのか?

 この場合の問題は、待っている間が不安ということだ。危険な小惑星の攻撃でベストショットを放つには、何年も、あるいは何十年も小惑星が我々に向かってくるのを忍耐強く観察する必要があるのかもしれないのだ。

「危険な小惑星で最善のショットを打つには、何年も、あるいは何十年も小惑星が私たちに向かってくるのを観察する必要があるかもしれません」(研究チーム)

 さらに悪いことに、引きつけた小惑星を爆破する試みが失敗した場合、プランBを考える時間はあまり残されていないことになる。もし失敗すれば一転してピンチの状況を迎えてしまうのだ。

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画像は「Pixabay」より

 しかし核攻撃しかないわけではない。NASAは昨年、「DART(Double Asteroid Redirection Test)」のミッションとして地球から約700万マイル離れた脅威のない小惑星に冷蔵庫ほどの大きさの探査機を衝突させた。理論によれば、衝突はその軌道を変えるのに十分なだけ岩石を揺さぶり、惑星への衝突を回避し得るという。

 NASAのこのDARTミッションが目標の小惑星の軌道を大幅に変更することに成功したかどうかを判断するのは時期尚早なのだが、しかしマサチューセッツ工科大学の惑星科学教授リチャード・ビンゼル氏は、おそらく核攻撃よりもDARTのほうが防御策として優れていると「The Daily Beast」に語っている。

「ブルース・ウィリスが迫りくる小惑星を迎撃し、土壇場で崩壊させるという演出は、ハリウッドのエンターテイメントとしては素晴らしいが、実際の小惑星の脅威を軽減するためのあくまでも最後の手段です」(リチャード・ビンゼル氏)

 さらにDARTのような手段は失敗しても何度も試みることができるので、衝突の危険性を特定した時点からじゅうぶんな時間的余裕をもって何度も行うことができる。

 しかしそうはいっても、地球上に大災害をもたらすほどの小惑星の進路を変えるのは並大抵のことではなく、多大なエネルギーを必要としているため、爆破するほうがはるかに簡単なケースもあるとの指摘もあるようだ。

 地球に衝突する可能性が高い小惑星を見つけた場合、悠長に構えているわけにはいかないが、かといってじゅうぶんに検討せずに早急な策を講じるのも拙速に過ぎることになるかもしれない。結局は“アルマゲドン”のストーリーになってしまうにせよ、人類滅亡はなんとしても阻止したいものだ。

参考:「The Daily Beast」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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