プリゴジン暗殺とプーチンの思惑をジェームズ斉藤が解説! ロシアのアフリカ利権を巡り7月から不穏な動き
ジェームズ斉藤(以下、ジェームズ):23日にプリゴジンが暗殺されましたね。
──いや、びっくりしました! こんな早く消されるとは思いませんでした!
ジェームズ:私もです。プリゴジンの粛清路線は定まっていたものの、今回は環境整備が不十分なままで実施されたので、世界の意表をついた形になりました。ロシアは準備不足でも大それたことをやるので理解できますが、今回の事件は歴史に照らし合わせても例外と言えます。
プリゴジン一行はプライベートジェットでモスクワからサンクトペテルブルクまで移動していたんですが、トゥヴェールで撃ち落とされました。現時点では、地対空ミサイルによる撃墜と判断しています。墜落の仕方も何らかのミサイル攻撃によるのものです。ジェットに乗っていたのはプリゴジンだけでなく、ウトキン、プリゴジンのボディガードのトップもいて、彼らはワグネルのトップ3人です。彼らが全員死亡したということはワグネルの組織の瓦解を意味します。
──犯人はプーチンなんですよね? やっぱり。
ジェームズ:ロシア国内での攻撃ですから他国の工作はほぼ考えられません。また、航空機を撃ち落とすとなるとロシア空軍の司令部のトップが了承しないとできないんですよ。で、プリゴジンが暗殺されたのが23日なのですが、その前日の22日にロシア航空宇宙軍の司令官スロヴィーキン将軍が突如、任を解かれたのです。彼はワグネルの関係者でプリゴジンの乱の時はプリゴジンと結託してクレムリンを落とそうとしました。反乱のあとは自宅に軟禁状態だったんですが、航空宇宙軍司令官のポストは解かれていなかったんですね。それが8月22日に突然、航空宇宙軍司令官のポストから解かれて大して有名でもない中将が代理司令官なっているんです。中将が司令官なんてそもそもおかしいんですよ。なぜなら空軍の副司令官は大将より上の階級の上級大将ですからね。それが中将の下になるなんて絶対にありえません。明らかにおかしな人事なので、私もX(旧Twitter)にツイートしていたんですが、なんとその翌日にプリゴジンの暗殺です。ですから、完全にプリゴジン暗殺のための一時的な人事ですよ。
──それにしてもなぜこのタイミングだったんですね。
ジェームズ:プーチンはプリゴジンの命を反乱のあとからずっと狙っていたのは間違いないと思いますが、このタイミングになったのはGRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)がプーチン側についたためです。つまり、ワグネルはやり過ぎたんです。
──何をやりすぎたんですか?
ジェームズ:アフリカの利権を独り占めにし過ぎたんです。少し前にアフリカはいまワグネルランド化しているという記事を出したじゃないですか。しかし、GRUにすれば、もともとアフリカの利権は俺たちのものだと思っていたわけですね。なのに傭兵部隊がなにを勝手なことをしているんだということでGRUが離れてしまったようです。
──アフリカ利権がきっかけだったと。
ジェームズ:振り返ってみると7月末に行われたロシア=アフリカ会議にその兆候はあったんですね。あの会議にプリゴジンは参加していたという話は前にしましたが、本会議には出席せずに、控室でアフリカの首脳たちと写真を撮ったりしていたんですよ。一方、本会議に参加していたプーチンの横にはアンドレイ・アヴェリャノフ将軍というGRUの特殊作戦部長がついていたんですよ。彼はこれまでも暗殺工作などを指揮してきた人ですから、あの時点でプーチンとGRUはすでに接近していたんですね。
──しかし、プリゴジンもその場にいたわけですから「あれ? GRUはプーチンについたのか?」とか、思わなかったんですかね?
ジェームズ:思わせるような素振りはしませんでした。もしも、少しでも疑っていれば、プリゴジンはワグネルのトップ3人を同じ飛行機に乗せることはしなかったでしょう。今回のプーチンの勝利はトップ3を一気に葬り去ることができたためです。そのためにワグネルは崩壊状態になってしまったわけですから。また、プーチンの評価ですが、この暗殺によってロシア国内では爆上がりしています。「裏切り者は必ず消す」と言っていたのを実行したわけですからね。正真正銘の「有言実行」です(苦笑)。それにプライベートジェットに乗ってる時に殺したことはオリガルヒ(1990年代に急速に富を蓄積したソビエト連邦構成共和国の大富裕層)へのメッセージになっています。なにしろ、ロシアでプライベートジェットを使うのはオリガルヒだけですから、いつでも撃ち落とせると言っているわけです。
──凄い工作だったんですね。
ジェームズ:電撃工作でした。しかも完全に隠密で、これぞロシアの諜報機関の本領だと確信しました。
──ただ、ウクライナ戦争はどうなるんですか? ワグネルを失ったら戦えないんじゃないですか?
ジェームズ:すでにプーチンはクリミアに新しい民間軍事会社を作っています。アルカディー・ローテンブルグ(サンクトペテルブルク出身ユダヤマフィア)というオリガルヒが金を出しています。彼はプーチンと同胞でワグネルの初期の出資者でもあります。
──では、もうワグネルの代わりはあると。
ジェームズ:この民間軍事会社にワグネルの元傭兵を吸収してもいいわけです。ただ、ワグネル兵士の中には反プーチン分子も残っています。彼らワグネルの残留部隊による第二の正義の行進、つまりクーデターが予定されているといわれています。ただし、実際に起こるかは不明です。計画自体はありますが。
クーデターよりも現実的なのがプリゴジンの遺した「プランB」です。プリゴジンは自分が暗殺された時の計画を自分の護衛部隊に共有していたようで、プリゴジン暗殺直後、護衛部隊はプリゴジンのオフィスに侵入してすべての電子機器と文書を回収して姿を消しています。文書にはプーチン個人に対する機密情報が記されているといわれています。
──機密情報ってどんな情報なんですか?
ジェームズ:プーチンのペド関連の情報だと言われています。もう一つは今回のウクライナ戦争の裏事情についても暴露する用意があるようです。
──ちょっと弱くないですか、衝撃として。ペド関連の情報で政治生命を絶てるんですか?
ジェームズ:いえ、ペドはかなり重要です。プーチンの人気の根源は力強さであって、力強さの根源はロシア正教の教義上における「ツァーリ(皇帝)」、つまり「神の代理人」として君臨しているためです。それがペドというのはプーチンのすべてを否定することになります。なぜなら、ペドは◎◎◎人しかやらない、サタニズムだからです。
──「ペドは◎◎◎人しかやらない」う~ん、これはかなりヤバい話になりそうですね(苦笑)。
ジェームズ:はい。これ以上言うと『TOCANA』に迷惑がかかると思います。某団体からボイコットを受け、社会的制裁を受けます。
──わかりました。続きはメルマガでやりましょう! いずれにせよ、プリゴジン暗殺でプーチン体制は一応固まったんですね。
ジェームズ:以前よりは固まりましたね。持ち直した、と言うのが適切です。ただし、まだ火種は残っているということです。特に、GRUの野望が抑えられていないことは深刻な事態です。続きの話を楽しみにしてください。
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