足が入ったままのブーツ、5人分の遺骨……パナマで行方不明になった女性2人の謎すぎる死

 最悪のエイプリルフールの一例といえるだろう。若い女子学生2人が南米の密林でハイキング中に行方不明になった未解決事件がある――。

■オランダ人女子学生2人が行方不明に

 オランダ人学生のクリス・クレマースとリザンヌ・フルーンの2人はギャップイヤーで南米を旅行し、各地のホステルに滞在していた。まさにエイプリールの2014年4月1日、彼女らは滞在していたパナマの山間の小さな町・ボケテを出発し、犬を連れてバル火山の頂上まで長いハイキングに出かけたのだった。

 この事件に取り組んだポッドキャスターのバレン氏は「彼らが今回のハイキングを特に真剣に受け止めていたとは思えません。それまでは基本的にガイド付きハイキングだったので、道を外れたり崖から落ちたりしないように地元の人と一緒に山を登っていました」と説明する。

「Daily Star」の記事より

 しかしこの時、2人は最低限の必需品とカメラをバックパックに入れただけで、ガイドなしで出発したのだ。その夜遅く、犬はホステルに戻ってきたが、彼女たちの姿はどこにも見当たらなかったのだ。エイプリルフールの悪い冗談であってほしかったものだが……。

 ホストファミリーは自宅周辺を捜索したが、当局への通報は朝まで待つことにした。翌日から警察による捜索がはじまったが、何の進展もないまま数カ月が経過し、少女たちの両親が多額の報酬金を用意したにもかかわらず、少女たちの手がかりは得られなかった。

 地元の女性が水田でバックパックを見つけたのは、それからほぼ3カ月後だった。女性は定期的にその場所を訪れていたが、このような特徴的なバックパックを見たのは初めてだと語った。

「バックパックはおそらくそれほど長い間そこに置かれていなかったでしょう。それはここ数日以内にそこに置かれたのだと思います」とバレン氏は説明する。中にはサングラス2本、現金83ドル、リザンヌ・フローンさんのパスポート、水筒、ブラジャー2枚が入っていた。

「バックパックの中のものはすべて非常にきれいに収納されていました。誰かが非常に意図的にすべてをバッグに入れ、ジッパーをきちんと閉めて誰かが見つけられるように川辺に置かれていました。10週間もジャングルに放置されていたバックパックとは思えませんでした」(バレン氏)

 バッグの中にはデジタルカメラも入っており、そこには一連の不穏な写真が写っていた。いかにも観光客然とした写真がいくつか記録されていたが、4月8日の早朝に撮影された複数の写真には、少女たちの所持品が地面に散乱しており、うつ伏せになって額の傷から血を流しているクリス・クレマーさんらしき人物が映っていたのだ。

 ほかの写真の中には、明らかに真夜中に撮影されたものと思われる写真もあり、少女たちのバックパックからさまざまな物品が取り除かれ、近くの岩の上に並べて置かれたような写真もあった。

 さらに奇妙なことに、最後に撮影された写真が完全に削除されていたことだ。通常、デジタルカメラの場合、撮影された後に削除された画像は専門家によって簡単に復元できる。専門的な知識を持った者がカメラロールの最後の写真を完全に消去したとしか考えられないという。

「Daily Star」の記事より

■遺体の一部が各地で発見される

 当局はバックパックが見つかった地域の捜索範囲を広げると、すぐに川岸できれいに折りたたまれた少女たちの衣服の一部が発見された。

 しかし彼らの遺体が発見されるまでさらに2カ月かかった。捜索者らはブーツの中に入った骨盤と足を発見し、その後すぐに、さらなる遺体の一部が各地で発見された。

 DNA鑑定の結果、これらの身体の一部が少女たちのものであることが確認されたが、そこにはさらに背筋を凍らす法医学的事実が浮かび上がったのだ。

 バレン氏は「DNA鑑定では、発見された骨片や遺骨の一部の中に、少なくとも他の3人の遺骨が混入していることも判明した」と説明している。事件では5人が死亡していたことになるのだ。

 バックパックの中から見つかった2人の少女の携帯電話を分析したところ、2人は4月6日までに70回以上も救急サービスに連絡を試みた発信記録が残されていたが、いずれも通じなかったことが判明した。

「Daily Star」の記事より

 病理学者は野生動物に襲われた形跡はないと判断し、クリス・クレマースの骨はまるで漂白されたかのように完全にきれいだったと付け加えた。捜査当局はまた、明らかに暗証番号を知らない何者かによる、クリスの携帯電話を利用する試みが数回失敗していた記録が残っていたことも公表した。

 警察は多くの地元住民やツアーガイド、そして当時その地域にいた他のハイカー数人に話を聞いたが、誰が少女たちの死に関与したのか、さらにはクリスとリザンヌがどのように亡くなったのかさえも特定できなかった。

 この不穏な謎に対する答えを持っている唯一の人物は、ジャングルの床で負傷して横たわり、4月8日の時点でおそらくすでに死亡しているクリス・クレマースの最後の不気味な写真を撮った人物ということになるだろうか。

 4月1日に旅立ち、携帯電話の最後の発信は6日であるということは、数日は森の中をさまよっていたことになる。その間、2人は何者かに襲われて殺害されたのだろうか。発生から10年が経とうとしている事件だが、この先に新たな展開があり得るのか気になるところだ。

参考:「Daily Star」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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